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りんごの情事

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第2話



 また朝が来た。

 でも、今日の朝は、ちょっと違う。

 ひとりじゃない。

 なんにせよ、昨日は楽しかった。

 來未は布団の中でほほ笑んだ。



***************************


 昨日、3人と1匹がりんご荘に着いた時、太陽は沈み、黄昏の時を迎えていた。
 りんご荘の前には、原色系の派手なファッションに身を包んだ女性が立っていた。仁田村である。
「おかえりー」
 ムサシは「ワン」と一吠えすると、尻尾をパタパタと振って仁田村に駆け寄った。
「ムサシ、おかえり。まったくお前はどこまで逃げて行ったんだか」
「ちわっす」
 明吉があいさつした。
「明吉もいらっしゃい。ニタんちに、天花とかいるから、入ってて。ってあれ・・、その子は・・・明吉の彼女?」
 仁田村も、來未を目の前にして、龍と同じことを言った。
「そういうことにします?來未ちゃん」
「えっと、それは、困ります・・・。」
「だよね」
 きょとんとする仁田村。
「新しくりんご荘に引っ越してきた栗山來未さんっすよ。僕達が旅行に行っている間に引っ越してきたンす。明吉さんとはたまたま会っただけっす。別に恋人同士じゃないっすよ」
 どことなくむきになって説明する龍。なんとなく、秋吉と來未が恋人同士に扱われることが気に入らないようである。
 ただ、周りの人間がその思いに気付くことはなく、むしろ、明吉なんかは「お前も同じこと聞いたくせに」と言って、龍をからかうのであった。
 まごまごする龍をよそに、仁田村は來未に近づき、にっこりとほほ笑んだ。
「はじめまして!仁田村エリです!女の子が越してくれてすごく嬉しい!よろしくー」
「はじめまして、204号室に引っ越してきた栗山來未です。福井からやって来ました。よろしくお願いします」
 來未はぺこりと頭をさげた。仁田村の屈託のない明るさが、來未には心地よく思えた。
「來未ちゃんかぁ。ううん、じゃぁ、くーちゃんって呼んでいい?うちのことは、ニタ、って呼んでいいから」
「はい。いいですよ」
「わぁい。じゃぁ、早くニタんちにおいで。天花と美味しい料理作ったの。くーちゃんを交えてウェルカムパーティしよう」
 仁田村は、來未の手を引っ張り、自室へと招待した。仁田村の部屋は、104号室にあり、來未の部屋の真下にあった。

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 テーブルにはごちそうが準備されている。
仁田村の部屋には、來未の知らない男女がいた。男の方はなかなかのイケメンであり、女の方は小さくて、お人形のように可愛らしかった。2人は奥の方で、仲睦まじく寄り添って座っている。恋人同士であろうか、と來未は推量した。
「あれ、ニタ、その子、だれ?」
 男が言った。お人形のように可憐な彼女の肩を抱き、來未には不思議そうな表情を向けている。
「このこ、新しく204号室に引っ越してきた、くーちゃんだよ」
「まじで!女の子が引っ越してきたんだ。やったな天花。」
 男はけらけらと笑いながら喜び、ごく自然に傍の可憐な女の頭にキスをした。そして、屈託のない笑みを來未に向けて
「よろしく、クーチャン。俺は黒沢一真。T大学の2年生です。こっちの小さいのは半田天花で、仁田村と同じ美大の2年生だ。」
「よろしく」
 お人形さん、ではなく、天花は來未に向かって、にっこりとほほ笑んだ。
「私は栗山來未です。この春から北澤高校に通う2年生です。204号室に引っ越してきました。よろしくお願いします」
「北澤高校って、龍と同じ?」
「あ、そうっすね、同じっす」
 來未達の後ろから、龍が返事をする。
「くーちゃん、福井から来たんだって。福井ってどこ?あ、まずは皆座ってご飯を食べよう。はい、座って座って」
 仁田村は、皆を促し、席に着かせた。來未の部屋もそうであるが、仁田村の部屋は決して広いとは言えない部屋なので、ちょっとぎゅうぎゅうになって座った。來未と仁田村は天花と一真のように一辺に一緒になって座った。そして、隣は明吉が、向かいには龍が座り、6人はわいわい楽しみながら食事をした。


作品名:りんごの情事 作家名:藍澤 昴