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アインシュタイン・ハイツ 302号室 藤井祐一

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師弟の会話


 帰宅後、『差し入れ』の仕込み(昨日はサンドウィッチだったので、今日はおにぎりにした。人数は概ね把握済みだったので、共同キッチンで米を炊いて、数種類の具とともに握っただけだ)を済ませた後、二度目の炊飯の隙間を縫って、『相棒』と会話していた。
『……で、ユウはこの俺に連絡してきて今度は何をしろって?』
 ビデオチャットの向こう側で、『ジェニオ』が面倒そうに溜息をつく。
 祐一もまた、苦笑した。
 このような折に、外国にいる人間を使って仕事をさせようというのは、本当なら何度も使いたい手法ではない。
 とはいえ、平家の件を放置しておくわけにも、この町でコネが有るわけでもない。
 結局、自分の身分を隠したまま『して欲しい仕事』をするには、ジェニオに頼らざるをえないのだ。
「……桜丘学園生(うちのがっこう)の名簿の入手だ。最近は個人情報保護の問題で、連絡網すらメール発信になる時代だからな。自力で探ってもメールアドレスまでしか分からないし、あまり上を探ると、俺の身元がね」
『……バレたくはないけど、解決もしたいってか。勝手な言い草だな、相変わらず。まぁ、お前の通ってる学校は既に俺の手の内だから、俺としちゃあ楽な商売だけどね。お前、そうやって相変わらず『目に入るもの全部救おう』なんて考えてるわけじゃないよな?』
 ジェニオが念を押す。
 現実論として、祐一の今の身分ではそれが非常に難しいことは祐一にもよく分かっている。だが、ジェニオが世界の紛争を一つでも小さく収めようと思っているのと同じで、その理想を掲げている事自体をやめてはいけないと、祐一は考えていた。
「前回はともかく、今回は目に入ったわけじゃない。『巻き込まれた』んだ」
『似たようなもんさね……。で、どんな名簿をどこまで出せばいい?』
 ジェニオは呆れた顔をしながら、手元でキーボードと別画面を眺めている。
 既に桜丘学園の名簿は手の内にあるのかも知れない。
「生徒一式だ。氏名、クラス、部活動の所属、住所、電話番号、『持ち上がり組』か『外部生』かまで分かればいい。後はこちらで分析する。それと、上履き盗難について誰かがリスト化しているはずだから、そのデータを」
『へいへい』
 チャットソフトの通話画面に『生徒』と書かれたリストが置かれ、祐一はそれを受け取る。
 それから、思いつく限り絞っておくべき条件を入力し、数回ソートを掛けた。
 浮かび上がった人物を、自分の記憶の中からひねり出す。
『お役に立てそうかい?』
 ジェニオの言葉に、祐一は頷く。
「……幾つか分かったな。それとは別に、もう一種類、今日の時点のデータが欲しい」
『言ってみ。出せるかどうかは別問題だけど』
「じゃぁ、この条件のリストを送ってくれ」
 そして、祐一は『ある条件』を口にした。