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八峰零時のハジマリ物語 【第二章 006】

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「それってつまり――俺にとっては『寿命はそんなに長く無いと思え』と言うことか?」
《……零時には悪いが急ぐ必要があるのだ。申し訳ない》
 そう言うと、シッダールタは苦渋の顔を浮かべた。
「もし、俺がお前にそう言われて『協力しない』なんて言ったらどうすんだ?」
《その時はまた別の人間を探すさ……ただ》
「ただ?」
《零時くんはそんなことは言わないし、ちゃんと協力してくれる。直感だがそう感じている。そして――それは君にもわかるだろう?》
「……」
 ああ、そのとおりだ。
 理由はわからないが――『お前に協力する以外選択肢は無い』と直感でそう感じている自分がいる。
――まったく。何なんだよ、一体これは。
《言葉に出せよ、零時くん》
「言葉に出したくないほど納得してないから言葉に出さないんだよ」
《まあ、この零時くんの『有無を言わさない選択の感覚』の正体は、ワタシにも実は理解できていない。だが、ワタシにとってはとてもありがたいことだ。ありがとう、零時くん》
「――いいよ、別に。ところで、神様の『感謝の感情』は『マナ』にはならないのか?」
《残念ながら『マナの力』を持っているのは君たち『人間』だけだからね》
「冗談だよ、冗談。ところでさ、『マナ』を集めるにはどうすればいいんだ?」
《ああ、それはね……『君が女性の悩み事を解決してマナを集める』のさ》
――はっ?
《声に出しなよ》
「さっきと同じ理由だ、二度も言わせんな」
《何でちょっとキレてんの?》
「それはだな……俺が一番苦手としていることだからだよ!」
《何が?》
「その『マナの集め方』だよ」
《えっ? どういうこと?》
「自慢じゃないが、俺は人と話すのが苦手なんだよ」
《えっ?》
「しかも『女性の悩み事を解決』だなんて……俺にはさらにハードルが高すぎる」
《ええっ!》
「悪いが他を当たってくれ」
《ええええええっ! さっきのかっこいいセリフはどこ行ったのぉぉ?》
「ふぅ……忘れてくれ」
《いやいやいやいや、こまるよ、それじゃあ!》
「いや、でも、俺、タダでさえ『目つきが悪くて無口』だから人から普段避けられてるしさ。それに女性となんてもう、かれこれ小学校以来会話なんてしたことねーし」
《ええええっ! もったいない! 零時くん、君、今、花の高校一年生だろ? そんな『暗い青春』送ってんの?》



「ほっとけ」
《ダメダメダメダメ、それはいかんよ~零時くん。よっしゃ! わかった! ではこうしよう》
「ん?」
 なんだ?
《ワタシが女子生徒に声をかける!》
「ちょ、ちょっと待て!」
《大丈夫。こう見えてもワタシは女性から尊敬と羨望の眼差しを向けられるくらいの人物だからね、天界では》
「――天界では、だろ?」
《それに――ワタシは人間の女性は大好物だ!》
 気づいたら蹴っていた。今回はなぜかヒットしていた。
《し、失礼。ワタシは女性に話しかけるのは好き……ではなく、君よりは得意なほうだ……と思うぞ》
 あー、こいつ、こういう性格なんだな~。
《聴こえてるぞ、零時くん》
「そのつもりで『心の声』を通したんだよ」
《いいかい、零時くん……『適材適所』だ》
「はっ?」
《君は『マナ』を集める協力をしないといけない(ワタシのために)》
――この野郎。
《でも、そのためには『女性の悩み事』を聴く必要があるということ……つまり『女性とお話すること』が必要だ》
「……そうだな」
《そして、そして。君は、残念ながら……非常に残念ながら女性と話すことに長けていない!》
「……まあ、な」
《ということで、誠に……ま・こ・とに! 不本意ではありますが、ワタクシ天界の救世主(メシア)ことシッダールタが、その時は零時くんの身体を借りてその役目を買って出よう! と、こういうわけです》
「なるほど――つまり、俺が女性としゃべれないことを『理由』に、人間界の女性とお近づきになりたいと、こう申しておられるのですね、天界の救世主様は」
《そういうことだ! 君もなかなか飲み込みの早い男だね、零時くん。助かるよ》
「やかましいわ」
 また蹴りをお見舞いした。これもクリーンヒットした。
《痛てて――まったく。君のツッコミはちょっと痛いよ。加減できないツッコミは素人だぞ》
「お、お前、まさか――さっきから俺の『ツッコミだけ』ヒットするようにしてたってのか?」
《もちろんだよ。『お笑い』には『ツッコミ』は大事だからね》
「お前、どんだけ『人間界のお笑い』知ってんだよ!」
《こう見えてもワタシは『人間界オタク』だからね。ただでさえ『創世の大樹』の中ではヒマしてたんだから。そこでよく『人間界の様子』をずっと追ってたんだよ》
「お、お前――『創世の大樹』の中では『救世の実』っていう果実みたいなもんだったんじゃねーの?」
《?――そうだよ。何で?》
「い、いや、だから――そんな『状態』で情報とか取ることできたの?」
《もちろん。『創世の大樹』の中では『身体』という『器』は必要ないからね。『エネルギー体のような塊』でいるから情報を取るのも『欲しいのを願う』だけで手に入れることができるのさ》
「す、すげえな~。それじゃあ『創世の大樹』の中って欲しいと思うものは何でも手に入るの?」
《まあね。ただし、肉体という『器』がない以上、君が思っている『欲求』は満たされないけどね》
「……? どういうこと?」
《つまり、肉体がある状態じゃないと経験できないことは得られないってこと。例えば『おいしいご飯食べてお腹いっぱいになる』とか『欲しい物を手に入れて満足する』とか、そういった『物質的な快楽』は得られないから》
「うーん――わかるような、わからないような」
《まあ、要するに、『創世の大樹』の中では『情報』くらいしか集めることができないってことさ》
「そ、そうなんだ」
《だから、ワタシには経験は無いが『知識』だけは膨大にあるのだ!》
 そ、それってつまり『頭でっかち』ってことか。
《大丈夫! ワタシは天界の救世主(メシア)だぞ? まっかせなさーい! それに……》
「それに?」
《こっちからアプローチなどしなくとも、おそらく向こうから寄ってくるだろう》
「?」
《人間界で言う我々、『神』や『天使』は人間を寄せ付ける『オーラ』を身に纏っている。ただワタシはそれをそのままにしていると魔界の悪魔に見つかるため抑えてはいるが、それでも魔界の悪魔には見つからないほどとはいえ多少は漏れている。そして、それだけでも人間界であれば、ある程度のオーラとなるため、敏感な人間はそのオーラを感じ取り、惹きつけられるだろう》
「マ、マジかよ」
《ああ。それにこのオーラに反応する人間であれば、それだけ心に『闇』を抱えている可能性が高いからな。悩み事を解決してマナを集めたいワタシたちにとっては打ってつけなのさ》
「ど、どうして、そのオーラに引き寄せられる人間は『心に闇を抱えている人間』なんだ?」
《わかるだろ? 人は心に『闇』を抱えたとき――『神』にすがる》
「あっ……」
 確かに。
《しかし――心に『闇』を抱えた人間は、『神』にすがるのと同じくらい――『悪魔』にもすがる》
「……」
 漠然とではあったが、シッダールタの言ったソレは理解できた。