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八峰零時のハジマリ物語 【第一章 002】

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 実際、チラッと「フード野郎」を確認したら「虚を突かれた」のか、その場に立ち尽くしたままだった。
 これならいける。
「フード野郎」との差はこの時点で「5mくらい」はあった。だから、これならヤツを完全に撒ける!

――そう思った。

――だから、「フード野郎」が俺に追いつくことは……あるはずが無い。

――そのはずだった。

 しかし、ヤツは……「フード野郎」は……俺に追いつくどころか、

"俺の『頭上』を飛び越えて、目の前に立ち塞がった"

「なっ……!」

 俺はこの「現実離れ」した「フード野郎」の動きに一瞬、虚を突かれた。
――瞬間、
 俺の身体は真横に吹っ飛び、ビルの灰色のコンクリートに思い切り叩きつけられた。
 というか、自分が真横に吹っ飛んで壁に叩きつけられたことが最初はわからなかった。
 壁に叩きつけられた痛みが先で、その後に『自分が右の横腹をヤツの左足で蹴られて真横に吹っ飛んだ』という認識が後からついてきてわかった。
「か……かはっ!」
 女子学生も一緒に吹き飛ばされたみたいだが、どうやら俺が手を離してしまったようで、だが、そのおかげで、壁に叩きつけられることはなく、自分と少し離れた場所に飛ばされ倒れていた。
 肋骨が……折れていた。
 間違いない。前に折ったときと同じ痛み……いやそれ以上だったから。
 しかも、おそらく一本どころじゃない……そんな痛みだった。

"勝てない"

 いや「勝ち」「負け」とか、そういう次元ではなかった。
 まるで相手にならない。
 もちろん――「相手が圧倒的な強さで」という意味で、だ。
 なんだよ……今の動き……なんで俺の頭の上から飛び越えて前を塞ぐなんて芸当ができんだよ。
 お前、陸上関係のオリンピック選手かよ。
 いや、オリンピック選手でもこんな芸当できんのか?
 いやいやいやいや、今、そういうこと考える状況じゃねーだろ、俺!

 零時は混乱していた。
 無理も無い。
――実際、零時の前に立ち塞がっている「フード野郎」は、

"人間では無いのだから"