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風のごとく駆け抜けて

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「で、2年生2人は帰ったのか」
ため息を漏らしながら永野先生がうな垂れる。

「まぁ、百歩譲って練習の方は疲労抜きだからいいとしよう。だが、駅伝前になにをやっているんだ? あいつら」
永野先生は珍しくイラついたような声を出していた。

仕方なく、1年生3人のみで練習をしてこの日は部活終了となる。

部活が終わって着替えていると、晴美がやって来た。
今日の出来事を話すと、かなり驚いた顔をする。

そして、次の日。
葵先輩も久美子先輩も部活に来なかった。

「まさか2人とも来ないとは思わなかったぞ」
あきらかに永野先生は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
かなり不機嫌そうだ。

おかげで私達も何も言えぬまま部活を始める。

駅伝まで約二週間となったこの時期に、こんな形でチームの結束が崩れるとは思いもしなかった。

葵先輩、久美子先輩とも部の創設から関わっているし、先輩として私達をひっぱり部活を盛り上げて来てくれた。その先輩がいないと言うのはチームとしてかなりの痛手だ。

なにより根本的に人数が足りないのだ。

「先輩達、駅伝どうする気なのかな」
部活終了後、晴美が不安そうにため息をつく。
紗耶も心配そうに相槌を打つ。

「明日、2人を問い詰める!!」
着替え終わった麻子は一言そう言って、1人で帰ってしまった。
部室のドアを叩きつけるように閉める姿を見る限り、相当イラついているようだ。

次の日の昼休み、クラスメイトと御飯を食べようと弁当箱を開けた瞬間に、麻子が教室に入って来る。

「何をしてるの聖香。行くわよ」
「いや待ってよ。今から御飯。てか、私も行くの? 麻子が1人で行くのかと」
「時間が無いから分担したの。久美子さんの所には晴美と紗耶が行ってる。私達は葵さんに話を聞きに行くの」

せかす麻子を必死でなだめながら、詰め込むように弁当を食べる。
多分、過去最速の速さで食べ終わったのではなかろうか。

おかげで、食事をしたと言う気分がほとんどしなかった。

桂水高校は各学年に普通科が7クラス、理数科が1クラスある。
その中で理数科だけは普通科とは校舎が別になっていた。

私達がいる教室棟の3階から管理棟を通り、第二教室棟へと歩いて行く。

ちなみに第二教室棟と名前が付いているものの、普通科の生徒の間では通称『エリート棟』と呼ばれていた。

県内でも有数の進学校として知られる桂水高校。
その中でも群を抜いて進学率が高い理数科クラス。
毎年、東大、京大へ合格するものが数名いる上に、医学部に行く生徒も多数いる。

正直、このクラスの生徒と学力で勝負しても勝てる気がまったくしない。

葵先輩はそんなクラスで成績3位というのだから、本当に恐れいる。
しかも、理数科クラスにしては珍しく運動部に所属してるというのに。

やはり、勉強に専念するためか、理数科クラスの生徒はほとんどが部活に入っていないそうだ。

決して禁止されているわけでは無いのだが、自然とみな塾に通ったりで、入部率は極端に低いらしい。

葵先輩の学年でも部活に入っている生徒は35人中6人だけ。
しかも運動部は3人、女子に関しては葵先輩だけらしい。

「よく考えたら、私エリート棟に来るの初めてだ」
お腹をさすりながら、私は思ったことを口にする。
麻子にせかされ急いで食べたせいで、昼御飯が胃の中に残っている感じする。

第二教室棟は2階建ての小さな校舎だ。
管理棟との渡り廊下は1階部分にしかなく、その1階は理数科クラス専用の図書室、進路相談室、それに自習室があった。

図書室の看板を見た時に、葵先輩が以前「専門書には困らない」と言っていたことを思い出す。きっと難しい本がたくさん並んでいるのだろう。

2階に上がると、各教室ごとに学年が書かれた看板がぶら下がっていた。

よく考えたら普通科と違い各学年1クラスだから、クラス名ではなく学年を書けば事足りてしまうのである。

1年生から3年生までが隣り合って並んでいる教室と言うのはなんとも不思議な光景だ。

私達はその3つ並んだ教室の真ん中、2年生の教室まで行く。

先輩方の教室へ入ると言うのは何とも勇気がいる。

入口の前で深呼吸をしようと大きく息をすった瞬間、なんのためらいも無く麻子が引き戸を引く。

まったく、麻子には緊張とか遠慮はないのだろうか。

そう思って麻子を見ると、その思いが間違いであるとすぐに気付いた。
あきらかに顔が不機嫌だった。

そう、麻子は怒っていた。

今の麻子にとって、先輩方の教室に入るのは緊張するとか以前に、葵先輩に会いたいと言う思いの方が強いのだろう。