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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 5 砂漠と草原の王

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3章 人質救出作戦



 ミセリアの姉をさらった一味の連絡役を捕まえた一同は、連絡役から得た情報を元に、ミセリアの姉の捕まっているらしい廃墟へとやってきていた。
 廃墟とはいうものの、しっかりとした作りをしたその館は、昔はどこかの貴族の館だったのだろう、アムルの寝室と同じような魔法よけがほどこしてあり、レオの魔法やクロエの魔法での侵入はできなかった。
 そのため一行は廃墟の敷地内から出て少し離れた小川のほとりで今後の作戦について打ち合わせをしていた。
「さて、と。どうするよ、俺の魔法もクロちゃんの魔法も無効ってことは、多分アレクやエド、ソフィアの魔法も無効にされるんだろうし、そうなると相手が何人いるかわからない状況にたった6人で切り込むってのは結構無謀な作戦だとおもうぜ。」
「はっはっは、レオよ、6人ではないぞ、8人だ。」
 アムルはそう言って少し下がった所に立っていたミセリアの肩に手を回して前に押し出した。
「いやミセリア入れても・・・あ、そうか。護衛の人がいるんだっけか。」
「そういうことだ。まあ、それに魔法が封じられていると言っても、この様式は我が国では割とメジャーな方法だからな。ヴォーチェならば解く方法も知っているだろう。」
「ヴォーチェって誰だ?」
「おお、そうだ。きちんと紹介していなかったな。今しがたレオが言った護衛の名前だ。」
「てか、女性だったのか・・・。」
「おお、長身で顔のつくりも美しいのだぞ。まさに一笑千金といったところだ。ヴォーチェ、皆の前に出てきて挨拶をせよ。」
「・・・・・・」
「ヴォーチェ?」
 アムルが呼びかけるが、ヴォーチェからの返事はない。しかし、アムルが根気よく呼び続けていると、一枚の紙がヒラヒラとアムルの頭の上に舞い落ちてきた。
『私は美しくなんかありません。なぜいつもそうやってハードルを上げられるのですか。』
 落ちてきた紙に書かれていた文章を読んでアムルがいつものように高らかに笑い声を上げた。
「はっはっは。お主は美しい。それは我が保証するぞ、そういう訳でヴォーチェよ、恥ずかしがらずに久方ぶりに我に顔をみせよ。」
『お断りします。』
 ヴォーチェが目測を誤ったのか、紙はなぜかアレクシスの頭の上に落ちてきた。アレクシスは書かれている文章を読み終えると、紙をアムルに渡した。 
「・・・だ、そうだ。彼女も嫌がっているようだし、無理に出てきてもらわなくても、作戦に支障がなければ別に問題はないんじゃないかな。」
「それだと時間がかかるし、出来れば一度面と向かって打ち合わせをしたかったのだが、まあ仕方があるまい。ではヴォーチェ、魔法封じを破る方法を皆に説明してくれ」
 アムルがそう言って姿の見えないヴォーチェに呼びかけると、今度は『少々お待ち下さい』とだけ書かれた紙が降ってきた。
 最後の紙が降ってきてから三十分ほどして、一同の目の前に突然新しい数枚の紙が現れた。
 そこには、魔法封じの術式を崩すための手順と、手順にしたがって壊すべきわかりやすく詳細に記載されていた。
「時間がかかると思ったら、これを書いていたんだ・・・。うわ、すごい、これ三十分で書き終わるような量じゃないよ。」
 手順の他に廃墟の簡単な見取り図も描かれている紙束をパラパラと流し見しながら、エドが関心したようにつぶやく。
「でもなんでわざわざ紙に書いたんだろ。声で教えてくれればいいのに。」
「ヴォーチェは幼い頃に受けた傷が元で声を出せぬからな。」
「あ・・・そうなんだ・・・無神経な事を言っちゃったかな・・・。」
「はっはっは、何を気まずそうにしておる、ヴォーチェは声は出せぬが伝えたいことはハッキリと伝えてくるぞ、先ほどのように筆談であったり、本当に言いたいことがあれば、姿を表して目で話をする。声が出ぬことなど些細なことよ。我はどちらかと言えば、声が出ぬということを憐れむほうが、無神経だと思うがな。」
「・・・。」
『お気になさらず。』
 アムルに諌められうつむいていたエドの頭に落ちてきた紙には短くそれだけが書かれていた。
「さて、ではヴォーチェが書いてくれた資料を元に作戦を立てるとしよう。まず、この術式を破壊するには、ここと、ここと、こことここ。この4点の小屋に配置されているタリスマンを破壊する必要がある。こっちの紙に記載されているが、ヴォーチェの調べによれば、それぞれのタリスマンにはそれを守るものが居るようだから、そやつらを倒してから破壊せねばならんな。」
 エドが読んでいる紙とは別に、ヴォーチェが追加でよこした紙束を見ながらアムルが言った。
「ていうか、ヴォーチェさんはいつの間に調べたの?」
『昨晩、少々偵察をいたしました。』
 落ちてきた紙に書かれた文字を見て、アムルが笑う。
「はっはっは。それで、さっきまでおらんかったのか。」
『寝坊いたしました。面目次第もございません。』
「良い良い。お陰で侵入する方法がわかったのだからな。さて、八人で四カ所ということだから二人づつに分担して一気に仕掛けようと思うがどうかな。」
 アムルがそう言って全員の顔を見回すと、全員が神妙な表情で頷いた。
「俺も王様に賛成だ。下手に警戒される前に一気に決めたほうがいいだろうからな。」
「僕もそう思う。じゃあ、組み分けは――」
「クロエ、一緒に組もう。」
 アレクシスが言い終わる前にエドがクロエを誘った。
「え、別にいいけど・・・あたしでいいの?」
「え?なんで?」
「なんでって・・・」
 クロエがちらりとアレクシスの方を見ると、アレクシスは膝と手を地面についてがっくりとうなだれていた。
(すごい落ち込んでる!)
「・・・あのさ、エド。あたしよりアレクシス様と組んだほうがいいんじゃない?」
「え?私とアレクじゃ駄目だと思うけど。」
「僕じゃ駄目・・・。」
 エドの言葉を聞いたアレクシスはより深くうなだれた。
「いや、駄目ってそんなハッキリと言わなくても。」
「ソフィアはレオと組むだろうし、クロエはアムルと組みたくないだろうから、戦力的に私とクロエかクロエとアレクって組み合わせになると思うんだけど。」
「ああ、駄目ってそういうこと。それなら確かにあたしとエドって言うのはありね。」
「でしょ?じゃあ決まりね。アムル、私とクロエで一番遠い北の小屋を担当するよ。少しくらい遠くてもクロエの空間移動を使えばすぐだからね。」
「了解した。ではソフィアとレオはどうする?」
「じゃあ、わたしたちは西の小屋に行きますね。」
「ふむ。では我とヴォーチェ、ミセリアは東を担当しよう。アレクシスは一番近い南を頼むぞ。」
「ああ・・・って、僕は一人なのか?」
「はっはっは。お主なら一人でも大丈夫だろう。と、言うよりは一人のほうが気兼ねなく本気を出せるだろう?」
 そう言って意味ありげに笑うアムルに、アレクシスは肩をすくめて答える。
「わかったよ。確かに僕は一人のほうが都合がいいしね。」
 短くそう言って、アレクシスはそのまま東の小屋へ向かって歩き出す。
「アレクシス、そっちではない。この先の、あそこに見えている小屋だ。」
 見当違いな方向に歩き出したアレクの襟首をアムルがすぐに捕まえて、本来の目的地である小屋の方へ向けさせた。
「わ、わかっているさ。」