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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 5 砂漠と草原の王

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1章 砂漠と草原の王




 セロトニアに着いた翌日の朝、エドが目を覚まして食堂へと降りると、アレクシスとクロエが何やら話し込んでいた。
「あれ?クロエいつ来たの?」
「つい今さっきよ。例の件が成功したからその報告を持ってきたの。」
 クロエの持ってきた報告というのは、マタイサの一件の報告であった。
「ヘクトールや叔父上たちの活躍もあって、ほとんど被害も出さずにうまく事が進んだらしい。さすがだね。」
「そっか。じゃあみんな無事なんだ。よかったあ。」
 船の上で計画を聞かされてからというもの、ずっと心配していたエドはそう言って、ほっと胸を撫で下ろして笑った。
「じゃあ、あとは私達が作ってもらった武器を持って帰れば、後はリシエールに向かうだけだね。」
「まあ・・・本当だったらそうなるはずだったんだけどね。僕としたことが、すっかり忘れてたよ。」
 ため息混じりにつぶやくアレクシスの言葉にエドは首をかしげる。
「忘れてたって?」
「セロトニアとグランボルカに面している大国があるだろ。」
「えっと・・・アストゥラビだっけ?」
「そうだ。どうやら叔父上・・・グラール叔父さんが言うには、どうにもアストゥラビの動向が心配だから、一度アストゥラビの王に話をして、同盟なり不可侵条約なりをきちんと結んだほうがいいんじゃないかっていう話でね。」
「でも、グラールさんって、自分の部下の裏切りを見抜けなかったんだよね・・・?」
 そんな人の言うこと聞かなくても大丈夫なんじゃないの?はっきりとは言わないものの、エドが言外に言いたいことを理解したアレクシスが首を横にふった。
「エドの言いたいことはなんとなくわかるけど、あの人は昔から外交を主としてやってきた人だから。外交についてグラール叔父さんがそう言うならアストゥラビの方も手を打たなきゃいけない状況なんだよ。まあ、そういうわけだから、悪いんだけど僕といっしょにアストゥラビに行って欲しいんだ。」
「アストゥラビ・・・アストゥラビか・・・。うーん・・・確か子供のころにお父様に連れられて行ったことが・・・しかもあんまり楽しくなかったような・・・ああっ!思い出した!アムル王子の国だ。」
「そうよ・・・好色王のアムル王のとこ。」
 あからさまに顔をしかめるエドと溜息混じりに眉間を抑えるクロエを見てアレクシスは苦笑を浮かべた。
「二人の気持ちはわかるけど、彼も一応僕の友人だからさ。そう邪険にしないであげてほしいな。僕はもちろん行くとして、エドとクロエと、あとレオとソフィアにもついてきてもらおうと思ってるんだけど、どうかな?」
「ついて行くのはいいけどさ・・・お城に入るのはちょっと遠慮したいな。ねえ、クロエ。」
「そうね。申し訳ございませんが、私も遠慮させていただきたいです。レオが側にいれば万が一の事もないでしょうし、私達は城門のすぐ外で待機するということで。」
「えっと・・・だから彼も別に獣っていうわけじゃないし、誰彼かまわず女性に手を出すっていうわけでもないし。そこまで嫌わなくても・・・。」
「獣だよ。」
「誰彼かまわずですよ。」
「・・・これは、まいったな。」
即答する二人の答えを聞いたアレクシスは困ったような笑顔を浮かべて頭を掻いた。