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Savior 第一部 救世主と魔女Ⅲ

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「よう! またせたな!」
 快活に言って得意げな笑みを見せたのは、大剣を携えた青い髪の青年だった。使い古されたその剣と、埃で薄汚れた旅装は幾分か魔物の血で汚れている。それでいて当人に怪我がなさそうであることと、先程魔物を倒したときの手慣れた様子が、彼の実力を物語っていた。シリルかキーネスの知り合いか。そう思っていると、アルベルトの後ろに下がっていた少女が顔を出した。
「あ・・・! ゼノ殿! 無事だったんですね!」
 彼の姿を認めて、青い顔をしていたシリルが少し嬉しそうに言った。青い髪の青年――ゼノの方も、安心したようににかっと笑う。
「当然だろ! おまえこそ無事でよかったぜ! はぐれた時はどうしようかと思っ――」
「おいゼノ。今までどこで遊んでたんだ。お前がしっかりこいつを見張ってなかったせいでこんなことになったんだろうが」
 手厳しく言い捨てたのはキーネスだ。彼はゼノの方を見ながらも、両手に握った短剣で近付く魔物を蹴散らしている。それに対し、文句をつけられたゼノは不満そうな顔をして全力で抗議した。
「はあ!? あのなあ! オレだって魔物に襲われたりデカい猪に追いかけられたりして大変だったんだぞ! ってかおまえこんなところにいたのかよ!? そっちこそ遊んでたんじゃねーのか?」
 そう言いながらゼノは大剣を振るい魔物を斬り捨てる。キーネスの方を見、騒々しく喋っているが、その太刀筋は確かだ。
「馬鹿言うな。俺は俺の仕事をしていただけだ。それよりローゼンはどこへいった?」
「途中ではぐれちまったよ! どこへ行ったのかは分からねーけどたぶん無事だと思う!」
「そうか。なら後で探すしかないな。まず魔物を片付けるぞ!」
 そう言ってキーネスは慣れた手つきで剣を振るい魔物を倒していく。鮮やかな斬撃に狼のような姿をした魔物が一体、血を噴いて倒れ伏した。



 魔物を殲滅するのにそれほど時間はかからなかった。突如現れたゼノという青年――これまでの話から察するに、キーネスの知り合いでシリルの保護者らしい――は、軽口をたたきながら剣を振るい、時折キーネスと見事な連携を見せながら魔物を蹴散らして行った。リゼとアルベルトに加え、その二人のおかげで大量の魔物の群れも敵ではなく、野原は動かなくなった魔物で埋め尽くされることとなった。
「はあ、なかなか大変だったな・・・・・・それで、こいつらは?」
 ゼノは一息ついた後、大剣を背中の鞘にしまい、リゼとアルベルトを見てそう言った。勿論、誰かを知りたいのはこちらも同じである。自己紹介の暇がなかったのでそのまま共闘していたのだが、これでようやく互いを知ることができそうだ。
「“探しもの”だ。クロウを治すためのな。リゼ・ランフォードにアルベルト・スターレン」
 答えたのは二人ではなくキーネス・ターナーである。紹介を受けたゼノは二人を交互に見ると、にかっと笑った。
「アルベルトにリゼだな。シリルを助けてくれてありがとう。オレはゼノ・ラシュディ。よろしくな! ・・・・・・って」
 そこで、ゼノは何か思い出したらしい。二人を指さして、
「あああ! メリエ・セラスで魔物退治してた奴らか!」
 と驚いた様子で言った。そういえば、大剣に青い髪とメリエ・セラスで魔物退治した時に会った退治屋の青年である。ここでまた会うとは思わなかった。
「おいちょっと待て。ということはあの時頼んでおけばこんな遠回りすることなかったじゃねーか・・・・・・」
 頭を抱え、呻くゼノ。しかし、そんなことを言ってもしょうがないと思ったのか、ものの数秒で頭を抱えるのをやめた。
「まあでもこんなに早く見つけられるなんて思わなかったぜ」
「当然だ。俺がわざわざ探しに出かけたんだからな。さっさと事情を話して治してもらえ」
「そうだな・・・・・・いや、でもそれならここじゃなくて一端別の場所に移らないと――」
 シリルの方をちらちらと見ながら、ゼノは困ったように言葉を濁す。どうやら込み入った事情があるようだ。それもシリルに関わることで、である。悪魔憑きに関わることなら不安にさせないためにシリルに聞かせたくないのだろうか。アルベルトはちらっとシリルに視線を移すと、彼女は疑問と不安がないまぜになった表情で、じっとゼノを見ていた。
「いつまでもそんな問答していないで、知っていることがあるならさっさと話してくれる? これじゃいつまでたっても悪魔祓いができない」
 その時、業を煮やしたリゼがキーネスとゼノに詰め寄った。キーネスの方は表情を変えなかったが、ゼノは慌てて「ちょ、ちょっとまってくれ」と制止しようとする。またややこしい事態になる前に止めようとアルベルトが口を開こうとしたとき、少女の声がその場に割って入った。
「ゼノ殿、話してください。わたし、知っていますから」
 思いがけない発言に、ゼノは息をのんだ。
「ザウンでオレたちが話していたこと、聞いてたのか?」
「いいえ。でも、やっぱり自分のことですから」
 そう告げる少女の顔を見て、ゼノは深々とため息をついた。それから彼は頭をがしがしとかくと、仕方ないという様子で言った。
「・・・・・・じゃあもっと落ち着けるところに行こうぜ。ここからすぐのところに使われてない小屋があるからさ。話はそこでちゃんとするよ」



 ゼノの言う通りその使われていないという小屋というのはすぐに見つかった。この辺りは元々コノラトの農地だったのだが、今は使われていないらしい。この小屋も、廃棄された農具倉庫なのだろう。そこについてすぐ、ゼノとシリルは事情を話し始めた。
 ゼノ・ラシュディの本業は先程の戦いが示す通り魔物退治屋であると、わざわざ退治屋の証明であるメダルを示して告げた。キーネスも同じ退治屋で、ゼノの親友兼仕事仲間なのだそうだ(キーネスは腐れ縁だと主張したが)。
退治屋の仕事は町を襲う魔物を退治するだけではなく、人里離れた場所への探索から酒場の用心棒まで、腕っぷしを要求されるものなら何でもやるらしい。そして、現在ゼノが請け負っているのが、シリル・クロウという少女の護衛だった。
 それもただの護衛ではない。シリルはどこかへ行くわけでも帰るわけでもなく、とある場所から逃げ出してきたのだという。ゼノも依頼とはいえ、逃亡を助けた上に今も彼女の出奔を手助けしている状態なのだそうだ。
 そしてその『とある場所』というのが。
「教会から逃げ出してきた? それってどういうことなんだ?」
 聞き返したアルベルトに、ゼノは悪戯が成功した時のように少しばかり得意げに言った。
「小さい町の小さい教会だったから、そう苦労しなかったぜ? 速攻でミガーに帰ったから検問にも引っかからなかったし・・・・・・まあそこからが大変だったんだけどよ」
 やや沈んだ表情になって、ゼノは話を続ける。
「ミガーについてから、シリルが悪魔憑きだって分かったんだ。シリルは、えっとなんだったか・・・」
「“憑依体質(ヴァス)”だ」
 思い出せないゼノの代わりにキーネスが口にしたのは、初めて耳にする用語だった。“憑依体質(ヴァス)”とはなんだ? リゼがそう問い返そうとすると、隣でアルベルトが驚いたように身を乗り出した。