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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
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After Tragedy5~キュオネの祈り(前編)~

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キュオネの祈り【前編】2


 神殿に行くことになった日、僕が川で顔を洗っていると背後から気配がした。
 僕が振り返ると、そこには、いたずらに跳ねた毛を2つに分けて三つ編みをしたキュオネがいた。頭には、アネモネの花を挿している。
「ユクス、デメテルが迎えにきたよ。」
 キュオネは、微笑みながら僕に顔を拭く布を差し出した。
「その恰好…。」
 キュオネのいつもとは違う髪型に僕は驚いた。差し出された布を受け取りながら、もう一度彼女を見ると、恥ずかしかったのか、彼女は目を逸らした。僕も何となく落ち着かなくなってしまう。
「可愛いだろ~?」
 キュオネにぴったりくっついていたキロが僕をからかってくる。その相変わらずな様子に、僕は苦笑いをしそうになった。僕が見る限り、キロはキュオネの傍から離れたことが無い。こういったちょっとした用事でも彼女はキュオネから離れなかった。過保護すぎる気もするが、敢えてそこは触れないでおこう。
「その花、付けていくのか…。」
「駄目かな…可愛いと思ったのだけど…。」
キュオネは、花に手を当てると不安そうな顔をした。
「その花の意味は縁起が…。」
「気に入っているみたいだからいいじゃん!」
 僕が言いかけるとキロが割って入ってきた。
「本当に頭固いというか…理屈屋と言うか…絶対に早死にするな…。てか、決定だな!」
 言いたい放題なことを言って、彼女は僕の頭を片手でドカドカと叩いた。痛すぎる。僕は、筋肉質なキロの腕を眺めた。本当に数日前まで、鎖で繋がれていたのだろうか、30年もの牢屋での生活など無かったのではないかと思われる程、キロの身体は衰えていない。