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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
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After Tragedy5~キュオネの祈り(前編)~

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キュオネの祈り【前編】1


 キュオネ達と暮らし始めて、数日が経過した。
 僕は、幼馴染トイ・ラインの家の僕に用意されている書斎で、彼の元に送られてきた村の規則についての書類の内容を彼に伝えていた。日はすでに暮れ、もう、他に雇われている人間は居なくなっていた。蝋燭の火がぼんやりと室内を照らしている。

「お前、直ぐに帰ってくると思っていたのになぁ、意外に持つよな。」
 ふと、トイは、脈絡もなく、僕にそう言ってきた。トイは、この村の村長の息子で、大人になってからは僕の雇い主だ。仕事中は主従関係にいる僕らだが、他に誰もいなくなるとそういった関係を忘れ、気軽に幼馴染として会話をするのが日課だった。
「まあ、いつまでも新婚のところを申し訳ないしさ。」
 僕は努めて明るく言った。僕が(トイの妻である)ライを好きなのは死ぬまで隠し通さないといけない。少しでも、顔に出るようなことが無いようにと僕は書類で顔を隠した。
「やっぱり、あそこのお嬢ちゃんが気になるってことなん?」
 トイは、そんな僕の気持ちなど、お構いなしと言った様子で、昔からする様に僕の肩に気軽に腕を回した。トイの骨格は僕と違ってしっかりしていて、結構重たい。
「違うけど。キュオネは子どもじゃないか。」
 厳密に言うとキュオネは、14歳であり、一応成人と言った扱いであるが、彼女は何処か幼い雰囲気を醸し出していて、とても僕から見れば、恋をする対象とは言えなかった。僕は溜息交じりにトイを見る。トイは相変わらずニヤついている。
「いやー、俺もユクスがロリコンでマザコンだとは知らなかったよ!単なるネクロフィリアかと思ったのに意外だった…。」
 酷い言い様だ。ネクロフィリアを『単なる』と形容していいのか分からないが、僕は何故そんな風に言われなくてはいけないのか分からず、相変わらずご機嫌な顔で絡んでくる親友に疑問をぶつけた。
「僕がシー兄ちゃん達の研究で毎日死体の描写された本を見ていることでそう言われるのは分かる。で、なんでマザコンになるんだよ。」