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フェリオス年代記996

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フェリオス年代記996 2の月 プロローグ



行軍演習を終え、学校の校庭に到着したベルティーナ達を校内から見つめている一人の老貴族がいた。
くたくたに疲れた生徒達を眺めている表情には笑顔がこぼれている。
 デルネーリ先生が生徒達に何か激を飛ばしているようで疲れきった生徒達はうんざりした顔で話を聞いていた。
10分ほどその状態がつづきデルネーリが解散を命じると生徒達はふらふらとおぼつかない足取りで寮に戻っていったが、 そのなかに地面にへたり込んで動かない少年が一人、薬学科や医学科らしい生徒達が近くにいた歩兵科数人の手を借りて医務室に運んで行くのが見える。
それを眺めていると、部屋の扉をノックする音がきこえる。
「デルネーリです」
老貴族は扉の方に向き直ると入りたまえ、とドアを開ける許可を与える。
デルネーリが扉を開けて老貴族の机の前まで歩み寄って行くと姿勢をただし、敬礼をする。
「ただいま任務から戻りました!」
「ごくろうだったな、デルネーリ先生」
老貴族はねぎらうように言った。
「報告してくれるかね?」
「は!混成第4小隊は戦闘を行うも被害は0。ただ・・・」
「ん?」
「彼らはリーパと出会い交戦した模様です」
それを聞いた老貴族は驚いた顔をする。
「ほほう、リーパと交戦して被害ゼロとは奇跡のような話だな。神に感謝せねばなるまいて」
「そして、おそらく戦女神の助力があったと思われます」
それを聞いた老貴族はさきほどよりもさらに驚いた顔をした。
「おお、それは幸運であったな。そうだな、そうでもなければ彼らは生きて戻ってきてはおるまいな・・・」
と腕を組み何度もうなずく。
「で?」
「は?」
「だれか見初められたかね?」
「あ、いえ、すぐにどこかに消えたそうで・・・おそらく彼女の眼鏡にかなうものがいなかったのでしょう」
それを聞いた老貴族はすこし残念そうな表情をする。
「それは残念だな、確認するが彼女は一人だったのかね?」
「はい、報告ではそう聞いてます」
「なら、なおさら残念だ。大陸東部にはほとんど現れないと言うのに…」
「ただ、本人はルイーザと名乗り、オルシュティン教会神学校女子部に所属していると話していたそうです」
「・・・!?ハハハ、そうかそうか、それが本当ならこの星の処世術すらまだ身についていない若く純粋な戦女神だろうな。何とか見つけ出してわしが立候補しに行きたいくらいだよ」 と校長はわははと笑い、鼻の下をのばしていた。
それを見たデルネーリはあきれながらぼそっとつぶやくようにささやく。
「はあもう、歳を考えろよな…」心の声がつい口に出てしまったようだ。
「ん?何か言ったかね?デルネーリ君?」
「あ、え?いえなんでもありません」 と手を振りながらデルネーリはとりつくろったが校長はなにか疑うような様子で目をすぼめデルネーリをじろじろとながめていたが それに耐えられなくなったデルネーリはすばやく話題を戻した。
「あ!、それと校長、警備隊や騎士隊にもこの情報は伝わっていますのでご注意ください」
校長とよばれた老貴族は不敵な笑みを口元に浮かべる。
「早急に騎士隊と交渉しこちらに任せてもらおう。それと平行して調査を開始する。本当に存在していればわれわれの側に引き込む手を考えよう。彼女達の言葉で言えば、誰かと結婚していただく、ということになるのかな」
「しかし、過度な干渉を行えば彼女達は姿を消してしまうのではありませんか?」
「そこはきみ、…うまくやりたまえ」
「は?」
「調査はわたしがやるがその後の作戦指揮は君に任す。責任重大だぞデルネーリ君!」
「は、はあ」
デルネーリは力なく返事を返すと校長はうなずいた。
「では下がってよろしい。情報が入り次第連絡する」
「は!」
敬礼をしてデルネーリは部屋を出て行った。
それを見送った後、校長はいすの背もたれにもたれながら目をつむりひとりごちる。
「ふう、女神か・・・実になつかしい。見初められた者はたまったもんじゃないがな。いや、結局の所は本人しだいというところか。さてさて、あと4年もない、出来るだけの手を打たんといかんから大胆かつ盛大にやってみようかね」