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▽夏彦先生の顔が赤いワケ

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ごめん



「寒いとこ待たせたな」

つっても、こいつが勝手に1人で待ってただけなんだけど。

「寒い・・・あっためて」

日向の両手が俺の頬を包む。
あまりの冷たさに心臓が止まりそうになる。

「つっめたっ!!・・・なあ、なんで今日呼び出したんだよ」

「話があったから」

普通に考えて話つったら

『キスしてごめんなさい』
『からかってすいません』

とか、まあいろんな言い訳ごたごた並べるんだろうな。

そんな話、聞く価値なし。

「親心配するぞ。もう帰れ」

「嫌だ」

日向に腕を掴まれたまま、俺は小さく溜息をつきながら
日向の頭をはたいた。

「もう、怒ってないから。き、キスされたことも・・
気にすんな。来月テストあるし、お前はそれに集中しろ」

「そーじゃねぇよ」

俺の腕を掴む日向の力が強くなる。

「はい?」

「俺はキスしたことを謝りたいんじゃない。
それに関しては後悔もしてないよ」

「なっ?!!」

腕を引っ張られ、そのまま抱き寄せられた。

なにも言わずに、俺を抱きしめる日向。

口に出さなくたって伝わる、溢れんばかりの『大好き』って気持ちが
俺の胸を締め付ける。

なんでよりによって俺なんだよ・・。

「男が好きとかそうゆう趣味じゃないし、男なら誰でもいいとかそんなんでもない。
男を好きになったのだって先生が初めてで、俺だって戸惑ってる」

『先生が初めて』ってセリフに
不覚にもときめいてしまった俺。

「やめろ・・」

日向の胸を右手で強く押すと、案外簡単に俺から離れる日向。
一気に寒くなった。

「報われないよ、お前」

「わかんないじゃん・・先生今、顔真っ赤だし脈ありそうだよ」

俺は俯き、顔が赤くなった言い訳を全力で探した。

だけど答えは1つしか見つからない。

「好きになってくれてありがとう・・でも、やっぱりごめん」

日向の髪の毛を、かきあげるように豪快に撫でた。

「そんなんで誤魔化すな」

頭を撫でる俺の手を掴んで、日向が言う。

これ以上俺を刺激しないでほしい。

日向に理解力があれば、俺は今頃、家に帰ってテストを作って
明日の授業の準備も終わらせていたはずなのに。

「お前を好きになるのが怖い・・」

馬鹿みたいだ。
自分の気持ちすら抑制できないなんて。

止めようもなく溢れ出すこの感情がなんなのかは
小学生でも分かる。

だけど、気づきたくなかった。

「俺も、先生好きすぎて怖い」

「微妙に話し変わってるけどな」

「怖いって気持ちは一緒でしょ?」

日向の顔がスローモーションのように近づく。

「あれ・・、抵抗しないんだ」

「したってするんだろ・・?」

2度目のキス。冷たくなった唇同士が重なる。
その部分だけ、急激に熱を帯びて熱くなる。

この前のキスと違うところは
俺の気持ちにも、何年もご無沙汰だった感情が
蘇っていたってこと。

「後悔したって遅いからな」


「後悔なんかしないよ」