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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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雪の朝

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校長の浅野は焦っていた。休校か時間遅れかを決めなければならない。そのタイムリミットは朝の5時である。高校は学区が広く、電車通学の生徒がいるためである。
天気予報では、明け方には5センチの積雪になるはずであったが、外に出て確かめた所では1センチほどで有り、雪はちらほら降っている程度であった。
教頭に電話を入れた。教頭の自宅の方が学校に近かった。
「こちらは見た目では2,3センチの積雪です。今は雪はかざ花の程度です。自転車は走れそうです」
「そうですか、では1時間遅れと言うことで連絡してください」
教頭はそのことを学年主任に連絡した。学年主任はクラス担任に連絡を入れる。
連絡網は担任から、5人づつに別れた班長に行く、1クラス40人なので、担任は8人の生徒に電話をかけることになる。そのなかには必ずと言っていいほど電話に出てくれない生徒がいる。そんな時は副班長に電話をする事になる。
通常の始業時間は8時30分である。1時間遅れなので9時30分になった。
所が、雪は6時ごろから降り出した。見る見る積り始めた。
6時半に校長は教頭に電話を入れた。
「困ったな。他の高校は休校にした所もある様だ」
「では急いで休校の連絡網を回しましょう」

生徒が休校になっても、教職員は勤務しなければならない。浅野はいつもより早い時間に出かけ、平常の始業時間に着いた。教頭や何人かの教師も来ていた。
庭に出てみると、用務員と一緒に生徒が雪かきをしていた。
雪は止んでくれた。

「連絡網は行かなかったのか?」
「1時間遅れと言うので父に車に乗せてもらいました」
「そうか、今日は休校になった」
「はい。聴きました。教室で勉強して行きます。父が迎えに来るのは仕事が終わってからなので6時過ぎになるのです」
「雪かきは止めて教室に入りなさい」
「おじさん1人では大変だから手伝います」

浅野は職員室に戻り
「お手すきの先生雪かきをしましょう。登校してくる生徒がいるようですから」
校長の呼びかけで先生方は自転車の通路の雪かきを始めた。
年に1度か2度雪が降る程度なので、雪かきの道具などは用務員が使うだけであった。塵取りや園芸用のスコップを使った。
校舎の外は一般の歩道があった。生徒も利用するので、そこの雪かきもした。
道具のない生徒たちは、雪だるまを作りながら雪を集め始めた。
5センチほど積もった雪は歩道からほとんど消えた。

浅野が学校の雪かきをしたのは教員になって初めての事であった。雪かきは用務員の仕事であると思っていたからである。浅野は生徒に教えられた。
学び舎とは教師が生徒に教えるだけではないと初めて知った。お互いが教え教わるものがあるのだと感じた。
事務室の電話が鳴りだした。
「歩道の雪かきありがとうございます。明日になれば凍ってしまいますから、助かりました」
「生徒さんたち頑張ってますね。感心しました。とても感動しました」
誰かが見てくれている。
誰かがこの雪かきから学んでくれている。
浅野はすがすがしい気分になっていた。
作品名:雪の朝 作家名:吉葉ひろし