小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

『愛情物語』 ノクターン第2番 op.9-2 (ショパン)

INDEX|22ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 

 山梨大学付属病院に近い、小さな台所とバス・トイレが付いただけの8畳の洋室1部屋のアパートで、大迫希はいつも一人ぼっちだった。
 まだ元気な頃はスーパーのレジのバイトをしていたが、今は、親が遺してくれたお金でつましい暮らしを続けている。
 大阪から戻ってからは、コンビニですぐに食べられる食料品をまとめて買っておき、ほとんどの時間は伏せっている。といっても、ほとんど食べることが出来なくなっていた。

 全身に回った癌細胞は、どうすることもできない。
 どの医学書にも記載されていない状態で、初めから治療のすべはなかった。特定の臓器が、というのではなく、すべてが、全身のすべての細胞が、わずかな変異をしているらしい、と聞かされていた。
 ただ進行するままに、高科医師は記録を取るだけであった。

 冴子に手紙を出すことに、かなり躊躇いもした。
 しかしもし、冴子が歌音のクローンだとしたら、自分と同じようにいずれは細胞が癌化し、原因が分からないままに死んでいくことを思えば、放っておいてはいけない、と考えたのだ。

 冴子は、やって来るだろうか。
 天井を眺めながら、そのことばかりを考えていた。