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コメディ・ラブ

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夜の畑仕事と俺



ロケが終わり、部屋に一人でいても面白くもなんともない。

テレビももう飽きた。

ふとあいつのことを思い出した。

散歩がてら小学校へふらふら歩いてみた。

上を見ると、空は星で埋め尽くされていた。

俺の見える範囲には人はおろか動物さえも見当たらなかった。

人目を気にしなくてもいいことに足取りが軽くなる。

小学校まで来て、門の中をのぞくと本当にいた。

何か作業をしていた。

声をかけようとはしたが、なんて呼んでいいのかわからない。

考えた挙句

「美香先生」

と呼びかけた。

「なに?」

あいつが訝しげに振り向く。

「昨日のお礼。」

また戦いになったらたまったもんじゃないので、チョコを一粒あいつにむかって投げる。

餌づけだ。

「東京のチョコだぞ」

「えっ、本当?」

意外と嬉しそうで驚いた。やっぱり田舎は東京という言葉に弱いな。

俺はここでウルトラスーパー馬鹿な質問をしてしまう。

「先生、ところで何してるの?」

奴は急に笑顔になり鍬を見せてきた。嫌な予感がする

「もう帰ろうかな」

後ずさりする俺。

「せっかくきたんだから手伝ってよ」

「お前この俺様に何いってんだ。俺は5000万人が涙した、純愛ドラマ、ラブアゲインの……」

「いいから」

「近寄るな!やめろ!」




俺はいい奴だ。本当に人がいい。

ゴム長靴に頭にタオルまでまかれ、鍬で畑を耕している俺。

誰がどうみたって田舎者だ。

「こんなこと、子どもにやらせればいいだろう」

思わず本音が出る。

「こどもたちだと深くまで土起こせないし、肥料もめちゃめちゃにまぜちまうからな。」

「がっかりするぞ」

「何が」

「大人が耕した畑なんて」

子どもの気持ちになって答えてやった。

「だから夜やってんでしょうが。」

「えっ?」

俺は驚愕した。まさか……

「子どもたちだけで、畑作りから収穫までやるんだよ。大人は一切手伝わないことになってるから。」

「なんて報われない……俺。」

「そんなもんだよ」

さも当然かのようにあいつは笑う。俺とは根本的に考えが違う。

「俺だったら、子ども達の為に夜中にこっそり畑たがやしてますって写真付きでブログにのせるけとな」

あいつは何も言わず少し笑った。

そして俺、晃様に突拍子もないことをいいやがる。
   
「明日、子どもたちと苗うえするけど、来る?」

「……この俺様が苗上なんてださいことするか。俺はな全国5000万人が」

「わかった。わかった。…誘った私がばかだったよ。」

そうだ。本当に大馬鹿だ。この身の程知らずめ。


<章=フラッシュバック>

昼間の太陽と疲労感のダブルパンチに朦朧としながら、なんとか畑の脇に立っている。

子どもたちが嬉しそうにスコップを持ち土を掘っている。

昨日は、あいつが来てくれて助かったな。

二人がかりで夜の12時までかかってようやく終わった。

あいつって意外といい奴なんだよね……
  
ふと懸命に畑を耕す姿を思い出した。

なんだか思い出してはいけない物を思い出したような気がして頭の中から追い出した。

子ども達に声をかけた。

「深くまで掘るんだよ」

子ども達が急に手をとめ、指をさしている。

「あっ」

「先生、晃だ!!」

子ども達が歓声を上げる

やっぱり来たんだ。

意外といい奴め。

何故だかわからないけれど、嬉しくなり子ども達が指さす方を振り向いた。



校長教頭はじめとしてカメラマンを多数ひきつれてやってくる晃の姿が見えた。

「今日は晃さんが地元のこどもたちと交流するということで、密着取材です。」

どっかで見たことがあるリポーターが実況している。


私はしばらくあいた口がふさがらなかった。

カメラのフラッシュがまぶしくて、我にかえった。

「……あいつ、来たからにはこきつかってやるからな」

一番最初にあいつに会った時に感じだ気持ちが蘇る。



カメラが帰った後もあいつは意外によく働いていた。

「ねぇねぇ晃、こっちも来てよ」

子ども達からの信頼も厚い。

しまいには一緒に鬼ごっこまではじめてしまった。

「やっぱ意外にいいやつかも」

誰にも聞こえないように呟いた。



作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko