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一緒にゲーム作りませんか?

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 しかしそのコンテストが終了したのだからこのまま止めても構わない、香奈だってそのつもりで参加してたし、つかさちゃんは1人で続けるつもりだろう、だけどオレは約束があった。
「そんな事無いよ、オレも昨日は勉強になったよ」
「じゃあゲーム作りは?」
「勿論続けるよ」
 今回は本気だった。
 確かにあの時は来栖さんに言われて思わず頷いちまったけど今回は違う、今は心の底から自信を持って言える、
「実は新しく作ってるんだ」
 オレは背負っているリュックサックの中から一冊のノートを取り出した。それはまだタイトルは決まって無いけど、今書いてる新作のシナリオだった。
 8月にプラネットにセイクリッド・ソウルを送って家に帰った後、オレはソワソワして落ち着かなかった。
 するといつの間にか机についてノートを開いてシャーペンを走らせていた。この数ヶ月必死で書いてきたからその生活が体に染み付いてるんだろう、気がつけば次のゲームのシナリオを考えていた。
 パラパラとページをめくる来栖さんは頬を緩めてオレに言って来た。
「やっぱり吉崎君には才能あるよ、本当にすごいね」
「そ、そうかな?」
 来栖さんはフォローはするがお世辞は言わず、むしろ表も裏も無い、彼女の言葉は本物だ。信用して良い。
「安心した。それで1つ…… お願いがあるんだけど」
 来栖さんはモジモジと動き始めた。どうやらトイレでは無いらしいが?
「……私も、仲間に入れてくれないかな?」 
「仲間?」
「お祖父様の許可は得てるの、今度は私も吉崎君や香奈ちゃん達と一緒にゲームを作りたいの、ダメかな?」
「そんな事は無いよ…… ただ、できればオレから言いたかったよ、一緒にゲーム作りませんかって…… さ」
「そう」
 来栖さんは微笑した。
 確かに主催者側の関係者が出てはいけないと言う理由は無い(実際仁さんは出てた)だろうし、今回の事でそう言う決まりが出来ない限りは大丈夫なはずだ。
 来栖さんが参加してくれるなら香奈だって喜ぶだろう、つかさちゃんは面識無いから説明する必要があると思うが何とかなるはずだ。
「それに、吉崎君の為でもあるし」
「オレの?」
 来栖さんは頬に朱を走らせた。
「ほら、好きな人に誘われたって言ってたじゃ無い?」
「あっ……」
 確かにオレはあの時、場の状況に流されて言ってしまった。今思えばあれって告白しちまったようなモンだ。
「あ、それはね、委員長…… オレは……」
 オレは慌てふためいた。
 途端来栖さんがクスッと笑った。
「もう『来栖さん』じゃないの?」
「えっ?」
「結構嬉しかったんだよ」
 オレはプラネットの中で来栖さんを庇った時の事を思い出した。あんな事が無ければ叫ばなかっただろう、
 今思うとメチャクチャ恥ずかしい……
「私、男子に名前で呼ばれた事って殆ど無いから……」
「そうなの? 他のクラスからも?」
「委員会のお仕事とかではあるけど…… 男の子の友達なんていないし、気軽にお話できるって言ったら吉崎君だけだから……」
 以外だった。
 って事は何? オレって来栖さんの中の男子の中じゃリードしてたって事か? 卓で言うならフラグが立ってたって事だろう、
 こんな事が学校に知られたら外出する時は気を付けなければなければならない、最近は日本も物騒になって来たんだし、町中を歩けばすれ違い様に刺される事になるだろうし、家に爆弾を仕掛けられるかも……
 これからは服の下に週刊誌を入れておこう、爆弾の方は110番に連絡すれば良いんだっけ? それとも119番?
「吉崎君、私もやるべき事が決まったの」
 これなんてギャルゲーだ? って言うか告白イベント発生?
 来栖さんは小さく深呼吸して気を落ち着けると真剣な顔をしながら言って来た。
「それは吉崎君とその子の恋の応援をする事なの」
「えっ?」
 時間が止まった。
 空耳が聞えたか? オレと『その子』?
「吉崎君って、好きな人ってどんな人? ウチのクラスの子?」
「え、いや、その……」
 それは貴女ですって言いたい、
 しかしオレは口は魔法封じの呪文でもかかったかのように動かなかった。来栖さんは細い顎に指を当ててしばらく考えた。
「吉崎君の好きな人って…… やっぱり香奈ちゃん?」
「なっ! そんな訳ないよ!」
 オレは思い切り否定する、
 香奈は見るだけなら確かに美少女だ。スタイルも良いし頭も良いし家事も出来る、だが唯一のバッドステータスである性格の責で全てが残念な事になっている、それさえなければオレだって付き合って良いと思ってる。
「それじゃあ、前に言ってた1年の子?」
「そ、そりゃ香奈よりはまだマシだけど…… 彼女じゃ無い」
 つかさちゃんは少し地味ってだけで目立てば結構可愛い子だ。
 優しいし芯もしっかりしてる、将来良いお嫁さんになるのは間違いないだろう、だけどオレの心は決まっていた。
 知らなかった。来栖さんって天然だったんだ。
 噂の『来栖聖子告白玉砕伝説』は彼女自身が告白を告白と思ってなかったんだ。それを男子達は振られたと思い込んだだけだったんだな、
「あのね、委員ちょ…… じゃない、来栖さん、オレはね……」
「あ、いけない! そろそろ帰らないと」
 来栖さんは公園の時計を見る、
 これから来栖さんはお祖父さんと出かけると言う、
「じゃあね、吉崎君」
「あ、ああ……」
 来栖さんはオレにノートを返すとそのまま公園を出て行った。
 残されたオレの周りを9月だと言うのに氷河期が再来したかのような冷たい風が吹き抜けたように感じた。
 別に嫌われたって訳じゃ無い、名前で呼べるようになったのだから立派な親展だと喜ぶべき事なのだろう、しかしどこか虚しかった。
「まぁ、いいか……」
 オレは大きく息を吐くとリュックの中にノートを仕舞い、チャリのサドルに乗った。
「よし! これからやるぞ!」
 気持ちを新たにオレはペダルを踏みしめる足に力を入れた。まだ暑いが青々とした空の下をオレは家を目指して走って行った。
 この時にオレは今度こそあの子が振り向いてくれるゲームを作ろうと心に決めたのだった。