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わて犯人

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第二話 ラーメン食べたい


「ねえどうしたのおじちゃん。そんな怖い顔して。」
彼はその大きな黒目でケイティの目を覗きこんでいた。
「き、君はなんだ。何者なんだ!」
「またずいぶんと難しい質問をするんだね、おじちゃん。僕の名前はモハブン。」
モハブンと名乗った少年は笑みを浮かべてそう言った。
その笑顔は普通の子どものそれとなんら変わらなかった。
「僕が何者かって?おじちゃんはこんな歌を知っているかい?」
モハブンはマイクを片手に歌い始めた。

ラーメンたべたい ひとりでたべたい 熱いのたべたい
ラーメンたべたい うまいのたべたい 今すぐたべたい
チャーシューはいらない なるともいらない ぜいたくいわない いわない
けど けど… ねぎはいれてね にんにくもいれて 山盛りいれて
男もつらいけど 女もつらいのよ
友達になれたらいいのに
くたびれる毎日 話がしたいから
思いきり大きな字の手紙 読んでね

「ううっ…いい歌だ。」
モハブンのあまりの歌唱力にケイティ達は涙を流した。

「ご清聴ありがとう。この歌は古代エジプトで流行った歌でね。人間のラーメンに対する信仰心がよく表れているんだ。古代からラーメンは神と同一の存在と考えられていたんだよ。」
「伝説上の話だ。所詮ラーメンは食べ物でしかない。」
突拍子もない話にジョンが思わず横やりを入れた。
「確かに、今のラーメンはただの食べ物でしかないね。でも大昔、ラーメンは強大な力を持ち、人間達を支配していたんだ。」
「おいおい、そんなお伽話に付き合っているほど俺達は暇じゃないんだよ。」
マインは失笑しながらそう言った。
「あははっこれを見てもそんなこと言っていられるかなあ?」
「・・・!?」
トム達には何が起こっているか理解できなかった。
いや、あるいは理解していたが、彼の常識がそれを否定したのかも知れない。
モハブンの体には現代医学では考えられないことが起こっていた。
腕や足のもげた部分から黄色の触手のようなものが生え始めていたのだ。
「こ、これは・・・ラーメン!?」
「そ、そんなバカな!お、おいケイティ!確認してくれ。」
「わかった。」
ずるずる・・・
ケイティは『それ』をすすり始めた。
「し、信じられないがこれはラーメンだ。しかもすごく美味しい。ほっぺがおちそうだ。」
「これでわかってもらえたかな?僕は真のラーメンでありそして神さ。体がラーメンでできているから冷凍保存も可能なんだよ。」

「そうかぁ。ちょうど腹が減ってたんだ。いただきます。」
ケイティはモハブンを食った。
「んんー、少し細めながらコシのある麺にあっさりした醤油ベースのスープが絡んでどうたらこうたら」
「さて捜査を再開するか。」
この時、それがケイティの最後の晩餐となろうとは、ケイティはもちろん、その場の誰もが予測しえなかったのだった。
作品名:わて犯人 作家名:熊田熊子