小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

空のくじら

INDEX|2ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

青山  宮古さんが結婚できないのって、その節々に見える小悪党じみた言動のせいだと僕は思う
    んですよね。
宮古  うるさいわね! なによ小悪党って。
青山  いや、ラスボスでも中ボスでもなさそう……。
宮古  やかましい! ほら早く準備して。さっきの騒ぎで警察とか呼ばれてたら洒落になんない
    んだから。
青山  え、もう行くんですか? まだ何分も経ってないですけど。
博士  よし行くか。
青山  博士、あんた一体何しに来たんですか。
博士  タイムマシンの性能チェックだ、この時代に特に興味はない。
宮古  そういうこと。さ、青山君!
青山  はぁ……。
博士 (裏から)ところで宮古君、さっきからこのランプが点滅しているがこれは何だったかね。
宮古  え、どのランプですか?(裏へ)
青山  ランプが点滅?
博士  私の記憶が確かならこれは……
宮古  えーと、ランダムって書いてるけど……
青山  博士待って触ったら……!
博士  時代をランダムに移動するモードではなかったかね?
青山  ちょっと待って博士、俺まだ乗ってないけど!
宮古  そーでしたね! 博士、どうします? 行っちゃいます?!
博士  ある機能を使わんのは愚の骨頂だ! えーい!
青山 (駆け出そうとするが間に合わず)ええええええええ! 信じらんねぇ、置いてかれた?!

青山  うーわ……これどーするよ? っていうか、え? え、どゆこと? 俺まさか、21世紀に
    おいてけぼり? このまま? ずっと?……めんどくせぇぇぇぇぇぇぇ!














        オープニング
いろいろな時代の人間が行き交う(できるだけたくさん人がいると良い)
かっこいい音楽が流れてるとなお良い。
青山、戸惑いながらも人の波の中にのまれ退場。
博士が古い手紙を握りしめて登場。しばらく懐古に耽った後、おもむろに手紙をポケットに仕舞い退場。
宮古、博士を探し登場。追いかける者の哀しい瞳。何かを振りきると決然とした表情を浮かべる。
宮古と入れ違いに深雪登場。一瞬だけ視線が交錯。大事な何かを託すような素振りをして力強く微笑み、深雪退場。
おまさ登場。人待ち顔。誰かに声をかけられた風情で照れて、また人待ち。

おまさ もう、旦那ったら遅いなぁ。せっかく頼まれたもの持ってきてやったってのに一体どこで
    何してんだろ。今日はお勤めないってわざわざ……あーあ。着物だって新しいの着てきた
    し、この帯だって女中に頼んで流行りの結び方にしてもらったのに。旦那気付いてくれな
    いんだろなぁ。
男   あれっ、おまさちゃん今日はお店はどうした。
おまさ 届け物があるって抜けて来たのさ。
男   人待ちかい。
おまさ まぁ、ちょっと。
男   しかし今日はやけに別嬪さんだなぁ……ははぁ、するってぇとあれかい? 待ち人はお城
    にお勤めなすってる旦那かい。
おまさ まぁ。
男   旦那も罪な男だねぇ、三笠のおまさちゃんって言ったらここらじゃ有名な大店(おおだな)呉服(ごふく)問屋(どんや)の
    看板娘ってそりゃあ別嬪で名が通ってるのにこんな道端で待たせるなんざ。
おまさ いいの、私が好きで待ってんだからほっといとくれよ。
男   旦那、早く来ると良いねぇ。
おまさ からかわないでったら! ほら、この先に用事があるんじゃなかったのかい。
男   おっといけねぇや、家のカミさんにちょっと気の利いたもんやろうと思ってな、見繕(みつくろ)いに
    来たんだよ。
おまさ へぇ、何か大切な日なの?
男   いや大したことじゃねぇんだが、もうすぐ祝言(しゅうげん)あげて丸一年なんでな。
おまさ おめでたいことじゃない、良いもんあげなよ。うちの店なら何でもあるよ。
男   そうさせてもらうかな。じゃ、俺はここらで。
おまさ はいよ。(男をたっぷりと見送って)祝言かぁ。

おまさ、周囲をきょろきょろ見渡す
誰もいないことを確認。
軽く咳払い。

おまさ おまさ、大事な話がある。
おまさ はい、旦那。
おまさ 俺は家禄(かろく)も低いし、次男坊だし、大した器の人間でもない。
おまさ そんなことないわ、旦那。
おまさ おまさ、そんな俺でも、ついてきてくれるかい。
おまさ 旦那、それって……。
おまさ 俺と夫婦(めおと)になってくれないか。一生幸せにするから。
おまさ 旦那ぁ!

裏で激しい音と光。

おまさ 何っ? 何なのっ? 旦那っ?!

(裏から)
宮古  痛たたた……博士ぇ〜大丈夫ですかぁ〜。
博士  こ……腰が……。
宮古  ここ、どこ……。
博士  モニターは……。
宮古  1725年……って、何時代ですか?
博士  知らん。
宮古  知らんって、あんた博士でしょ?!

おまさ だ、誰っ?!

宮古  あ、人がいるっぽい、聞いてみましょう。
博士  腰が……。
宮古  (舌打ち)役にたたねーなマジで。

宮古登場
おまさ全力で警戒

宮古  どーもー。宮古ちゃんでぇす。
おまさ き……聞いてたかい?!
宮古  はい?
おまさ さっきの聞いてたのかいって聞いてんだよ!
宮古  えーっと、さっきのというと?
おまさ だから、ほら、旦那とか、夫婦とか、その、ほら、
宮古  何のことかぜんっぜんわかんない。
おまさ じゃあ聞いてなかったんだね?
宮古  はぁ。
おまさ 聞いてなかったんだね?!
宮古  聞いてませんでした。
おまさ は―――よかった。
宮古  ご安心いただけまして?
おまさ ええとっても。水一杯ちょうだい。
宮古  どーぞどーぞ。
おまさ はぁ、ようやく人心地ついた。
宮古  それは良かった。
二人  ところで―――
宮古 (ゆずる)
おまさ(ゆずる)
二人  あの、
宮古 (同時に)ここって何時代?
おまさ(同時に)あなた誰?
宮古  み……宮古ちゃんでぇす?
おまさ 時代って何?
宮古  だからぁ、えーとここの首都は?
おまさ しゅとって何だい。
宮古  ……最近起きた事件とか出来事とかない?
おまさ ……長屋のかっちゃんに子供が生まれた?
宮古  ……あぁ、そう、おめでとう。
おまさ ……はぁ、まぁ、どうも。
宮古  埒が明かないわね。
おまさ 名前は分かったけど、あんたたち何者? おかしな格好して。それにすごい音がしたけど
    あれは何だったんだい。
宮古  質問はごもっともなんだけど、どうしよう、すっごく答えにくい。理解してもらえる気が
    しない。
おまさ 変な格好なんだけど、阿蘭陀(おらんだ)人とも違うねぇ。言葉も滑らかだし……。
宮古  ちょっと待って、阿蘭陀人?
おまさ 一度だけ見たことあるけど、もうちょっと仰々しい格好してたねぇ。
宮古  もしかして江戸か?
おまさ 江戸がどうしたって?
博士  宮古君、検索機能が動いたぞ。ここは江戸時代だ。
宮古  うんもうそれは分かった。
おまさ あんた誰?
博士  あぁ腰が……。
おまさ 越賀?
宮古  違うと思う。
博士  宮古君、この時代に来るメリットは何だね。
宮古  さぁ、哲学的な質問ですねぇ。
作品名:空のくじら 作家名:barisa