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空のくじら

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空のくじら


博士  発明家。とんでもない発明を次々にするが、人格故か全く世間に相手にされていない。
宮古  博士の研究助手。
青山  助手。基本的に生存に必要なことすべてが面倒くさい。政子の子孫。
片江尚五郎兼(かたえなおごろうかね)輔(すけ) 下級藩士の二男坊。おまさに惚れている。
おまさ 大店呉服問屋の看板娘。片江に惚れている。
政子(おまさと兼役)  21世紀の大学生。機械工学を専攻する。片江とおまさの子孫。
深雪  博士の亡妻。








博士  そこの君(男を指して)君だよ君。今日は何年何月何日だね。
男   は? 平成23年O月O日ですけど……。
博士  何時何分何秒!
男   O時O分……秒? 秒は……
博士  宮古君! モニターはどうなっている。
宮古  O月O日O時O分O秒、一秒の狂いもありませんわ、博士。
男   はぁ……おじいさん、あの、大丈夫ですか?
博士  大丈夫かだと? つまらないことを聞くな。君への要件は以上だ。退出を許可する。君は
    この歴史的瞬間に立ち会ったという稀有な幸運にただ感謝すればよいのだ。
男   はぁ……変なじーさん(退出)
博士  ふふふ……ふははは、ふははははは! ついに完成したぞ……! これがタイムマシーン
    だ! これでどんな過去にだって飛ぶことができるぞ。ふふふ歴史学者なぞ失業してしま
    え。この世に発明を伴わない職業など要らんのだバカ者め! 
……ん? なんだね君たちは。私の研究を称賛に来たのなら存分に歓迎してやりたいところだがまぁ君たちには私の素晴らしい発明のほんの0.5%も理解できないに違いない。説明してやらんこともないが……見込みがありそうな奴はいないな。なに? このタイムマシーンの科学的意義・歴史的価値だと? そんなことが知りたいのか君は。仕方ない教えてやろう、そんなものは1mmたりともないわバカ者め! なぜなら、私はこのタイムマシーンを他人に公表する気などさらさらないからだ!
    過去を研究して何になる、未来が変わるか? 変わるわけがない。そして私は未来になぞ
    興味はない。一切ない。
    私はただ過去に行って帰ってきたいだけだ、ただ行きたいから行くのだそれの何が悪い。
    ふはははバカめ、何をがっかりした顔をしている。私の偉業が理解できない凡人め。だい
    たい私はおじいさんではない! まだ50手前だ!
宮古  博士うるっさい!
博士  おお宮古君。なんだ無事だったのか。
宮古  気付いてなかったんですか。
博士  まあそんなことはどうでも良い。
宮古  だと思いました。
博士  いやどうでも良くない。宮古君、ちゃんとデータは採れたのかね。
宮古  採れましたよ博士。青山君!
青山  はーい。
宮古  身体的損傷なし。青山君、これから私の質問に答えなさい。
青山  はーい。
宮古  あなたの氏名および生年月日。
青山  青山進、西暦2133年8月3日(月日任意可)
宮古  本籍地。
青山  福岡(任意可)
宮古  あなたの職業。
青山  無職。発明家見習い。
宮古  私たちは?
青山  頭のいかれた発明博士とその助手の宮古さん。
博士  悪口か?
宮古  よろしい。
博士  いいの?
宮古  博士、成功ですね。
博士  私が失敗などするはずないだろう。
宮古  青山君。機体の損傷個所を確認して。ちゃんと未来へ帰れないと成功とは言えないわ。
青山  はーい。
博士  おーい宮古くーん。
宮古  博士うるさい。青山君どう?
青山  大丈夫みたいっすね。
宮古  よし、一応帰れそうね。
博士  だから私が失敗など
宮古  博士黙ってて。青山君、念のためセルフチェックもかけておいて。それから、消えてしま
    ったものがないかリストで確認して。なにせ人類初のタイムスリップよ。何がおこっても
    不思議じゃないわ。
青山  はーい。
博士  おーい。
宮古  何ですか博士!
博士  散歩してきていい?
宮古  勝手に行けばいいでしょうもう!
博士  行ってくる。
宮古  ったくなんなのよあのバカ博士は。
青山  宮古さーん、今セルフチェックかけました。見た感じ消えたものもなさそうです。ただ…
    …あれ? 博士は?
宮古  散歩。
青山  一人で?
宮古  一人よそれが何?
青山  良かったんですか?
宮古  なんのことよ。

遠くで悲鳴

宮古  何今の悲鳴!
青山  未来でもあんなんなのに、博士は過去の人間には刺激が強すぎるのでは。
宮古  博士ーっ!(駆け出す)
青山  あ、リストからなくなってたものはないけど、ないはずの物があったって言ってねーや…
    …ま、いっか。これ、薬かなぁ。酔い止めとか? なんも名前ないから市販薬じゃないの
    かも。でもなんで……いいや、考えんの面倒くせー。へぇ……ここが21世紀ねぇ。なんか
    ……レトロっつーかちょっとごちゃごちゃしてんのな……。
    平成23年ってーと、あ、あれかスカイツリー。わー、まだ新しい。
    ……つーか宮古さん俺ここに置いてかないでよ。何したらいいんだよ。えーい一人遊びぃ
    ……ないなー。機体のチェック……はしたなー。あーめんどくせぇ。なんかもー待ってる
    こと自体が面倒くせぇ。
    21世紀暇だなぁ。平和すぎて。
宮古  (博士を引きずりながら)あーもー信じられない。
博士  ええい離せ離さんか! 猫みたいにつかむな!
宮古  大騒ぎ起こさない分猫の方がまだましです。てゆーか猫バカにしないでください。猫はふ
    わふわでかわいくて肉球ぷにぷにで、博士の分際で何か勝てるところがあるとでも思って
    るんですか?!
博士  何ぃ?! 猫なんぞに私のような素晴らしい発明は不可能じゃないか!
宮古  その発明が! 迷惑なんですっ!
青山  どーしたんすか。
宮古  どーしたもこーしたも、あのまま放っておいたら私たちテロリスト一味だったわよ間違い
    なく!
青山  はぁ、それまた壮絶に面倒くさそうっすね。
博士  何がテロリストだ、私は小型化して持ってきた発明品のごく一部を出しただけではないか。
宮古  この時代にはねぇ、光線を当てるだけでものを小さくする懐中電灯やボタン操作ひとつで
    同じ時代のどこにでも行けるドアなんてないんですっ! てゆーか私たちの時代でも禁
    止されちゃったでしょ?!
博士  私の発明の素晴らしさを理解できん警察庁と法務省のバカどもの圧力でな。ところで君、
    ドラえもんとはなんだね。
青山  は?
博士  この時代にはドラえもんという科学者がいて、私の発明品の類似品を作っているらしいぞ。
青山  でもこの場合博士が類似品を作っていることに。
博士  なにぃぃぃぃぃ?!
宮古  あーもーどうでもいいわ。博士、とっととこんな時代とんずらこきましょう。
青山  宮古さん今なんて?
宮古  ……ずらかりましょう?
博士  宮古君。
宮古  なんですか。なんですかその可哀そうな人を見るような視線はっ!
作品名:空のくじら 作家名:barisa