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太陽のはなびら

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【暖かな村(2)】



そんな村の、ある一角にある小さな小屋に、一羽の大きなタカが舞い降りた。
淡褐色の体に、白く短い尾羽、黄色い嘴。翼を開けば、一般的な大人の男性ほどの大きさ。
この種類のタカは、ある民族では、「鳥の神」と呼ばれている。
確かに、その容貌は、見る者に畏怖の念すら抱かすほどだ。

その大きなタカは、首に一つの袋を提げていた。
その袋を、タカは器用な動作で、小屋の屋根の縁にあるフックに引っかける。
そして、屋根をくちばしで数回つついた。
すると、しばらくして、小屋の中から一人の少年が出てきた。
麻でできたゆったりした白のシャツと、木綿でできた緑のズボンを少年は着ている。
それがあたりの人々が寝間着としてきている服であることと、
耳のあたりまで伸びた黒い髪が、少しはねているところをみると、
少年がまだ起きて間もないことがわかる。
少年は眠そうに目をこすってタカをみる。
その顔には、青年に移り変わる、幼さの中に芽生えつつある精悍さが表れていた。

タカは少年を見ると、甲高い鳴き声を出した。
「おはようヒューイ。おつかいごくろうさん」
少年はフックに掛けられた袋を手に取り、中身を確認した。
中には一冊の医学書が入っていた。
「重かったろう。ご褒美あげるからこっちへおいで」
少年は右腕を地面と水平に伸ばした。
ヒューイと呼ばれたタカは、ゆっくりと羽ばたき、少年の腕にとまる。
少年が腕を曲げると、タカは少年の肩に移動した。
少年がポケットから一本のソーセージをヒューイの口元に持っていく。
ヒューイはそれをくちばしでつかみ、あっという間に平らげた。
そして、また甲高い鳴き声をあげた。どうやら喜んでいるようだ。
少年は袋の中の本を手に取る。
本の表紙には、「響覚者という存在についての研究」と書かれている。
しばらく、少年はその本の表紙を眺め、ヒューイを肩に載せたまま、小屋に戻った。

作品名:太陽のはなびら 作家名:伊織千景