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太陽のはなびら

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【響く心(4)】



「ちょっとまて、俺はお前が玄人なのかなんて聞いてないぞ。おまえ、まさか<響覚>を使えるのか?」

今度はシンの顔に動揺が走る。それを見て、商人は意地悪く、わざと皆が聞こえるようにしゃべり始めた。

「人の事を詐欺師呼ばわりしておいて、何だおまえだってそう変わらないじゃないか! 人の心を盗み読み、人を惑わす<響覚者>さんよお!」

周りの村民達が、どよめく。それだけ響覚者という単語が持つ意味は、果てしなく重いものだった。

「けがらわしい響覚者め。今、俺の心を読んだみたいに、他の連中の心も盗み見てきたんだろう! ああ、もうこんな村には二度と来ねえ。この化物めっ!」

そう言い捨てると、商人は荷物を素早く手に取り、逃げるように村から出て行った。
しばらく、沈黙が流れた。シンは周りの村人たちを見る。
が、彼らはシンと目をあわそうとしなかった。
村民たちの中から、村長が厳しい顔をして、シンに近づいてきた。

「シン、今あいつがいっていた事、本当か」

シンは静かに、無言で頷いた。

「シン、悪いが……此の村を出ていってくれ。響覚者がここに居ると……」

「わかってます。今夜、この村から出て行きますから。心配しないでください」

村長の言葉をさえぎるようにそういうと、シンは自分の小屋に戻っていった。
後ろから、ピリカが呼び止めようとする声が聞こえたが、シンが振り返ることは無かった。

作品名:太陽のはなびら 作家名:伊織千景