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超短編小説  108物語集(継続中)

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「それにしても不思議だわ。死亡推定時刻は昨夜の11時、閉館され誰もいないはずのシシィの絵の前で、なぜ美猫は刺されたのかしら?」
 急遽現場へと入った芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事が首を傾げる。
 その横で上司の百目鬼刑事は腕を組み、絵の中の凶徒を凝視し、「ラッキーだぜ、こんな傑作、独り占め出来てるんだからな」と呟く。

 これを耳にした芹凛は「ちょっと待ってくださいよ。鬼刑事なんだから、もっと捜査に身を入れてください」と恐い目で睨み付ける。
 すると百目鬼は「落ち着いて考えてみろ、誰しもこの名作をゆっくり味わってみたい。守銭奴の美猫はそこに目を付け、一儲けしようと目論んだのではないかな」と切り出した。

 芹凛はこの話しの意図が飲み込めない。それを知ってか、百目鬼はあとを諭すように続ける。
「狸の面には血痕がない、だけどそこに落ちてるパンダのマスクには血が付いてる。すなわち殺された後にお面は交換された、どうも犯人は、美猫を噂通りの強欲な雌狸に仕立て上げたかったようだ。そんな邪気がなぜ生まれたのか、そこに本事件の核心がありそうだな」と。

 芹凛はこの助言で思考回路が繋がり、捜査の道筋が見えてきた。
「さすが鬼デカ、勘所が違うわ。殺してまで恥をかかせたいという毒念、犯人がそこまで憎む美猫の悪行、それは何かを徹底的に調べましょう」と拳を強く握るのだった。