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超短編小説  108物語集(継続中)

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 時節は芸術の秋、美術館では欧州名画展が開催され、連日賑わっている。中でも大作『シシィ、レマン湖のほとりで』が人気を博し、その前で入場者が押し合いへし合いの状況だ。

 シシィはオーストリア皇后・エリザベートの愛称。1898年旅先で無政府主義者・ルケーニに刺殺された。
 人たちはこの絵からレマン湖に至るまでのその数奇な人生に思いを馳せるのだった。
 一方別館では画家の登竜門、新人コンクールで盛り上がってる。

 名画展ならびに逸材発掘展、この二つの展覧会を企画し、同時開催へと導いたのは美術界の女性リーダー・森姫美猫(もりひめ みねこ)。
 この名前からはまるでお伽の国のニャンニャンのような印象を受けるが、実のところは猫どころか拝金主義の雌狸(めだぬき)、これが風評だ。
 そして事件は起こった。
 シシィ暗殺の大作の前は血の海、その中で女性が狸の面を被って絶命していた。
 第一発見者は早朝見廻りの警備員。一報を受け、駆け付けた署員が身元確認すると、婦人は森姫美猫だった。