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超短編小説  108物語集(継続中)

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『クラシック音楽の夕べ、市職員が射貫かれる』
 本演奏会の責任者、霧花圭が森から放たれた矢により殺害された。犯人は闇に紛れて逃走。
 翌朝新聞は大きく報道した。

 もちろん百目鬼刑事も、部下の芹凛こと芹川凛子刑事も捜査に加わった。
「これはアーチェリーの名手の仕業だな」
 検死に立ち合った百目鬼、開口一番唸った。これに相棒の芹凛が「凶器は音を発しない弓矢、犯人はきっと被害者の顔見知りだわ。だけど、なぜ歌曲『魔王』の演奏中なの?」と首を傾げる。
 ベテラン刑事の百目鬼であってもこの答えを持ち合わせていない。謎は解かれないままに、二人は捜査本部へと引き上げた。

「お疲れ様でした」
 芹凛が差し出したコーヒーカップを百目鬼が無言で受け取る。
 こんな無愛想は何かに熱中している時。そしてやっぱり、いや驚いた、〈You Tube〉に見入ってるではないか。芹凛が「勤務中ですよ」と上司を諭そうとすると、その前に百目鬼はニッと笑い、口を開く。

「歌曲『魔王』は、語り手を別として、ファーターの父と、キントの子と、エルケーニヒの魔王で構成されてんだよな。圭介殺害の構図は歌曲『魔王』の、もしあるとしたら『その後』の父、子、そして魔王の関係が当てはまりそうだ」
 百目鬼は不躾なオヤジだ。しかし芹凛にとってこの奇想天外さが堪らない。あとは「親族を当たってみま〜す」と本署を飛び出すしかなかった。