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超短編小説  108物語集(継続中)

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 確か今朝の朝刊に次のように報じられていた。
 女子サッカー決勝戦、さざんかジャパン、ブラジルに2対1で惜敗!
 高瀬レチーシア、ノーマークで……痛恨のミス・シュート

 レチーシアのシュートは正確だと定評があった。それなになぜあの時、あのようなへなちょこシュートになってしまったのか自分でもわからない。多分焦ってタイミングが合わなかったのだろう。キーパーが浮き出た千載一遇のチャンス、蹴ったボールは右に外れ飛んで行った。

 そして日本では、これを非難するように、あの高瀬のシュートは祖国ブラジルに対し手心を加えたものだ。またここリオの現地では、レチーシアがブラジルに恩返しをしたとネット内で騒がれている。

 高瀬レチーシアはサンパウロ育ちの日系ブラジル人。小学生の頃からサッカーが好きで、オリンピックに出場し金メダルをとることを夢見てきた。その夢実現に向けて練習に励み、どんどんと上手くなった。しかし、ここブラジルでは大型選手が多く、小柄なレチーシアは力で押すサッカーに歯が立たない。よって、ブラジルからは決してオリンピック選手に選ばれないと自覚した。

 そんな苦悩の中で、2011年FIFA女子W杯を目にした。さざんかジャパンが黄金色の紙吹雪の中で優勝トロフィーを掲げ、歓喜雀躍(かんきじゃくやく)している。
 チームプレーが力ある個人プレーを制したのだ。そしてこの時レチーシアは決意した。日本へ行こうと。
 こうして日系4世の高瀬レチーシアは単身日本へ移り住み、そして夢を叶えるために帰化したのだ。