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超短編小説  108物語集(継続中)

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 洋一は久し振りに実家に帰った。
 父は八年前、そして母は五年前に他界し、今は誰もいない。家には火の気はなく、春だというのに冷え込む。還暦をとっくに過ぎた洋一、その冷たさが身に沁みる。

「さっ、飾り始めるか」
 洋一は気合いを入れ直した。今からお雛さんを飾ろうというのだ。
 まず納屋から古い木箱を運び込んだ。そしてそろりと蓋を開けてみる。少しかび臭い。中を覗けば、新聞紙に包まれた大小それぞれの物が丁寧に並べられてある。几帳面だった母がきっとそうしたのだろう。

 洋一はその一つを開いてみる。すると気品ある人形が現れた。
 母は言っていた。このお雛さんたちは生きてらっしゃるのよ、だから一年に一度は箱から出してあげないとね、と。