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超短編小説  108物語集(継続中)

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 バレンタインデー、いやその翌日の半額セールを待って、『妻チョコ』が愛妻から贈られてくる。
 特徴は決して高級なものではなく、味は極度に甘いか苦い。その上に値札は剥がされていないことが多い。
 課題はお返しだ。通常はホワイト・チョコだが、『妻チョコ』の場合、決してそれで済ませてはならない。「長年の私のサポートに感謝はないの。アンタ、一体何考えてんの!」とプッツン。あとは、家に入れてもらえないことになる。

 ならば何を返せば、満足して頂けるのか? ここに『妻チョコ』の難しさがある。
 では、これに答えよう。端的に言えば、100倍返し、これが相場だ。

 妻は夫の甲斐性を鑑み、お返し可能範囲のチョコを買い、その値札を残す。まさに妻の情け。よってこれに感謝し、500円チョコなら5万円、1,000円チョコなら10万円相当のお返しで、しっかりと応えなければならない。

 そして最も大事なことは、お返しの費用は決して家計に頼らないこと。男のヘソクリからとすること。
 これこそが長年連れ添ってきた妻への――愛、いや、自分のための介護保険だと思え。

「さすが先輩、だけど、何を返せば良いのですか?」
 こんなくどいオヤジ訓話に一応つきあったが、榊原はまだ結論を得ていない。

「あのなあ、『妻チョコ』には必ずメッセージが添えられてある。それが答えだよ」
「確かにメモ書きがありましたよ、たまにはゆっくりしてください、ってのが」

「お前アホか! そのゆっくりって、お前のことじゃないぞ。奥さんのことだよ」
 これを耳にした榊原、『妻チョコ』ミステリー、その謎が解けた。

「先輩、鱗から目が、いや、目から鱗が。お返しは……、カミさんを温泉に連れて行きます」