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エイユウの話 ~夏~

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「お前さ、このままでいいの?」
 敢えて「何が」という表現を抜かした問いかけをした。そこには別にかわされても良いという思いがこめられている。ぴったりとしているタンクトップの制服を身に着けたキースは、二の腕までの長さのある手袋を嵌めながら応じた。
「前よりマシだから、僕は十分だよ」
 アウリーの介入によってラジィとあまり話せなくなり、二人でのんびり過ぎていた時間に二人のお邪魔虫が割り込んできた状況が、どうマシになった状態なのか、キサカには理解しがたかった。しかし、キースが嘘をついているようには見えなくて、それが強がりなどではないことを知る。
 ロッカーにしまっていた自分の制服を取り出し、濡れたままの頭からかぶった。そのせいで、制服がびしょびしょになる。髪の毛の水気を十分に拭き取ってから制服を着たキサカは、濡れた制服を気にせず、上がってきてから一度も外していないタオルを腰に巻いたまま、水着と下着を取りかえる。結局ズボンをはくときも、タオルを外すことはなかった。キースは感心する。
「キサカって、雄々しいよね」
 フックを止める段階になって初めてタオルを外したキサカが、それを鞄に突っ込みながら彼の言葉を訂正する。
「無理しねぇで乱雑って言っていいぞ」
「じゃあ、大雑把ってことにしておくよ」
 相手と自分の意見の中庸に、キースは考えを置く。出会った初めの頃は気を遣われていると思い、あまりいい気分はしなかった。でも、それが彼の性分なのだと理解してからは、それほど不快感を抱かなくなった。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷