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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ (続)

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 一年余りの歳月の後、ようやく徹さんは離婚に応じてくれたが、私の神経はかなり磨り減り、疲れ切っていた。長ーいトンネルの先にようやく小さな灯りが見えた。そんな感じだった。
 その時になって初めて仲人さんに連絡を入れた。離婚の報告である。本来ならもっと前にするべきなのかも知れないが、それは二人の関係の修復を望む人の場合であって、私の場合はそうではないのだから……。

 私は、菜緒と二人で住むためのアパートを探した。次女も連れて出たかったが、徹さんが「兄弟は絶対離したくない」と強固に言い張るので、仕方なく私はその条件を飲むことにした。確かに、小学校一年と幼稚園の男の子二人だけ残されても、徹さんも困るだろうし……。しかしその結果、次女は母のいない娘になってしまったのだけど――。
 家を出る時に私は、小さい三人の子供たちを集めてこう言った。
「お母さんはもうこれ以上お父さんと一緒には暮らせない――だから家を出て行くけど、どこにいてもあんたたちのお母さんだからね」
「――会いたくなったらいつでも会えるんだよ。何かあったらいつでも連絡してくるんだよ」
「お母さんはあんたたちを捨てて行くんじゃあないからね。自分は母親に捨てられたんだ――なんて思うんじゃないよ」
「分かったねっ」と。
 子供たちは多分、私の言ってる意味が分かってはいないのだろう。ニコニコしながらうんうんと頷いていた。

 その日がついにやって来た――私の夢がいっぱい詰まっていたはずの、小さなマイホームを出る日が。
 当日は、私が以前から入っていたボウリングクラブの仲間が、仕事で使っている軽トラックを出して引っ越しを手伝ってくれた。その頃の私には、女友達よりも男友達の方が多かったから、こういう時には非常に助かった。
 引越しが終わり、十年振りにまた菜緒と二人だけの生活に戻ってしまった。
 離婚の最初の引き金となった下着の仕事は、離婚する少し前に辞めていた。
 元々それを私に勧めた小阪さんは、私が辞めるよりもっと前に辞めていた。
やはり家庭不和になりかけての決断だった。私もそうするのが賢い選択だったのかも知れなかったが、後悔しても遅かったのだ。私たちの関係はすでにそんなことで修復できる状態ではなかったのだから。
 私はすぐに働き口を探して就職した。菜緒は高校生だったから学費も馬鹿にならない。昔のようにまた貧乏な暮らしが戻ってきた。ただ違ったのは、菜緒は自分でバイトを始め、自分の欲しい物は自分で買い、私の負担を軽くしてくれた。