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帯に短し、襷に流し

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割を入れる



 入れるのは「喝」ではなく、「割」です。

 反物の幅は、大体9寸5分と決まっています。
 現在、大柄な方が多くなったので、尺五という、1尺5分幅のものもあります。もっと広い、尺一寸というのもあります。
 昔は、今ほどの栄養状態も良くなく、また、重たいものを持ち上げたりする作業が多かったこともあり、身丈は大きくはありません。上が伸びないと横も広くならないものです。
 また、織機の大きさも決まっていたこともあって、反物の長さは、一反、一丈、一匹と長いものがありますが、幅に大差はありません。

 体格がほぼ決まっていたとはいえ、やはり、規格外はいらっしゃるのです。
 例えば、お相撲さん。
 身幅が大きければ、裄も広いのです。
 裄には、肩の肉付きも関係してくるので、肉付きの良い方は、ますます長く必要になります。
 裄は、多少短くてもかまいませんが、手首の梅干が、にょっきり出てくると、流石に、見栄えが良くありません。つんつるてんでは、お話にならないので、反物を幅で接ぐことになります。これを、「割を入れる」といいます。
 主に、袖幅で割を入れることが多いですが、どうしても足りない時は、肩幅でも接ぎます。

 お相撲さんは、筋力に自分の体重を乗せて、相手を吹っ飛ばしたり、当たりに耐えたりするわけですから、一般の人に比べると遥かにガタイは良くなります。
 そうはいっても、最初からそんなに体格の良い方はいらっしゃらないわけで、お相撲さんも最初は普通の人です。
 そこで、早く、「割が入れられる」程に体が大きくなり、強くなって出世したい。という願いをこめて、足りているのにわざと割を入れて仕立てることもありました。布は、財産であり、より、多くの反物を必要とする割を入れた着物は、それだけで高価なものだったのもあります。

 若い社長さんや、起業したばっかりの若旦那なども、現在よりも一回りも二回りも、今よりも大きくなりたい、会社大きくしたいという願いをこめて、割を入れた着物を仕立てることがあります。一種の験担ぎです。
 これは、継ぎ接ぎとは違うものですから、礼装にも用いられますが、織機そのものが幅広のものがある現在では、必要のない知恵となりつつあります。
 また、片身代わりという仕立て方もありますが、こちらは、継ぎ接ぎです。
 

 2014.9.26 そろそろ風通しと衣替えの準備
 2014.11.24 転載

作品名:帯に短し、襷に流し 作家名:紅絹