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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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うこん桜の香り

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そんな考えで婚期を逃したのだ。
西山は百合には随分心配をさせたと反省していた。
アイマスクが外され、西山の視力は元には戻ってはいないが回復した。
画家としてどうにか続けることが出来るのである。
退院を許された。しばらくは安静と言う事である。電気カミソリも使用禁止であった。振動は避けなくてはならないのだ。
早く百合の顔が見たいのだが、自分から移動はできない。
西山は、百合の顔を思い出しながら、百合の肖像画を描きだした。
描きだして2日目の事、西山は目に違和感を覚えた。鏡で見ると、目の中に黒い糸が有った。睫毛かと思ったのだが、紛れもなく糸である。
病院に電話をすると、縫った時の糸だと解った。
翌日も黒い糸は出てきた。
西山は百合とは、こんな短い黒い糸の繋がりであるのではないかと考えていた。淋しい気持ちになった。
しかし百合の絵は描き続けた。

作品名:うこん桜の香り 作家名:吉葉ひろし