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エイユウの話 ~春~

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 教室に入ったキースを迎えたのは、緑の準導師と生徒たちの、あきれと嘲りだった。彼が何をしでかしたのか、みんな既知の様子だ。知らなくとも、いじめられっこが頬を真っ赤にし、髪の毛をぼさぼさにしていたら、きっと彼らは笑っただろう。
 もう聞き慣れてしまった、自分に対する周囲の感想。ラジィがいたが、この状況下では自分の味方は誰一人いなかった。ラジィはこの授業を取っていないのだ。たったそれだけのことが、彼にひどい孤独を実感させる。
「ああ、ケルティア。もう平気なのか?」
「はい。ご心配おかけしました」
 事情を知っていてなお、形式ばった質問をしてくる緑の導師に、キースも定型句で返事をする。お互いに心のこもっていないやり取りだ。そして、これが彼等にとっての当然でもある。
 特にそれ以上は何も無く、キースはいつも空いている最前列に腰を下ろす。ノートを広げ、教科書を見た。きれい過ぎる教室が、キースはひどく嫌いだ。だから真っ黒な黒板と、文字の並ぶノートだけで、自分の視界を作っていく。
 そんな彼の背後からは、無数の笑い声が聞こえてくる。授業を無視して友達と話す者もいれば、キースの姿や所業をまだ嘲笑う者もいた。
 流の導師は先の行為からも解る通り、一部にファンはいるものの、基本的には嫌われている導師だ。陰口を叩く者はファンの何倍もいるだろう。しかし、キースのように実質的行為に至る者はいなかった。一人歯向かうキースには、それこそ仲間が大勢付いても可笑しくないはずだが、治癒魔術の最高位である彼を敵に回すことを、誰もが恐れていた。事実見せしめのように、キースはかなり粗雑な扱いを受けている。
 みんな身勝手なんだ。そう思いながら、キースはばれないようにこっそりと後ろを見る。キースを馬鹿にする何人もが、流の導師の悪口を言っていた者だった。
 僕は、一人なんだ。どうしようもない孤独感が、キースを包んだ。
作品名:エイユウの話 ~春~ 作家名:神田 諷