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エイユウの話 ~春~

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「もう馬鹿な事しないのよ」
「はーい」「解りました」
 先ほどと同じ言葉だけ残して二人より先に出てしまった彼女の耳に、その返事が届いたか否かは解らない。パタパタとかけていく保険医の足音を聞きながら、キサカがニヒルな笑みを見せた。
「いいのかよ、校法医(こうほうい)が走って」
「ははは・・・、久々に聞いたよ、校法医って」
 キサカの言葉に、キースがノリだけで笑う。お蔭でひどくわざとらしい笑いになった。空虚な雰囲気の保健室に、乾いた笑いが響き渡る。それはひどく寂しくて、ほんのりと暖色に色づいた保健室とは、まったく似合っていなかった。
 キサカの言った校法医とは、保険医の地位の話である。
 教師を導師、準導師というように、保険医にも別の言い方がある。それが校法医というわけだ。だが、準導師が教師と呼ばれるように、校法医も普段は保険医と呼ばれている。ちなみに準導師は、導師の手伝いをする教員たちのことで、教師というには少し違うかもしれない。
 作った笑いは長くは持たず、止まった途端に重たい空気を作り出す。ため息をつきながら、どうしようもない自分たちのことを、キサカはキースに振った。
「馬鹿なことだってさ、俺たちのしてる事」
「・・・しょうがないよ」
 人に馬鹿にされようと、自分たちには避けられない道のりなのだから。そう続けるはずだった言葉を全て飲み込む。なんだか真面目臭くて、キサカといる時は言ってはいけない気がしたのだ。
 キースが不自然な切り方をしたせいで、空気はより一層重たくなる。その場を何とかしようと、どちらからとも無く、二人は廊下に出た。それでも何も空気は変わらず、わざとあきれた風にキサカが尋ねる。
作品名:エイユウの話 ~春~ 作家名:神田 諷