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女郎蜘蛛の末路・蜘蛛捕り編(後)

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終 苺春という男


玉緒を後にして、しばらく。苺春の姿は人気のない、裏路地の中にあった。
その手には携帯電話が握られており、傍目にも誰かと通話していることが分かる。
……しかし、普通に電話をするだけなら、わざわざこんな裏路地でする必要がなかった。
では、なぜ彼はわざわざこんな裏路地で電話をしているのか。深く考えずとも、彼があまり公には出来ない連中と通話をしているのは容易に想像出来た。
「えー。あ、はい。はい。承知しました。約束の時間には連れて行きますので。ええ、はい。それでは三日後の2時に、○○公園の前の路地で」
そこまで言うと、苺春は携帯のボタンを操作し、通話を終了した。
それから、ふーっと息を吐き出し、懐からタバコの箱を取り出すと、中から一本、取りだし、口にくわえた。ライターで火をつけ、煙を吸い込むと、なんだか気分がスッキリするのを感じた。
やはり、タバコを吸うと、いくらか気持ちがリラックスする。麻薬をやるっていうのも、こんな感じなんだろうか。
そんなことを思いながら、苺春はふーっと煙を吐き出した。
それから、ニヤリと卑屈な笑みを浮かべる。
「あーっ、まったくお得意様さまさまだな。良い年こいて、とんでもない変態どもだぜ」
―しかしまあ、そんな奴らがいるから、こうして自分は飯を食っていけるわけで。
自分も、他のやつのことは言えないな。同等のクズだ。
そんなことを思いながら、苺春は自虐的な笑みを浮かべた。
しかしまあ、仕方ないさ。世の中きれい事だけじゃ、生きていけない。ドロドロに汚れたやつが、勝ちを取っていくのさ。
そんなことを考え、ほくそ笑みながら、苺春はある問題に頭を悩ませていた。
“お得意先”と約束を取り付けたはいいが、それには肝心の綾子がいなければいけなかった。まずは、彼女を探さなければならない。
電話をしても、繋がらないことから、おそらくは携帯の電源を切っているのだろうが、それでも大して問題はなかった。
見間違えるはずもない―、あの時店の中に間違いなく綾子はいた。見知らぬ男を連れてはいたが、間違いなく綾子だった。
綾子が店を出る直前、すれ違いになった時に、微かに目があった。その時の彼女の怯えた表情。それが何よりの証拠だった。
正直、綾子に男がいるとは知らなかったが、それでもあまり問題にはならないだろう。どうせ、男に相談なんて出来やしないんだから。
それに、綾子は表向きはただの女学生だ。そんな彼女が移動できる距離なんて、たかが知れてるし、それに何よりも本能的に俺を恐れてもいる。逃げ出そうなんて、本気で考えてはいないだろう。
「だって綾子……お前は俺からは逃れられないんだからな」
くくっ、と鬼のような笑みを浮かべると、苺春は口からタバコの吸い殻を離し、それを思い切り踏みつぶした。