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CROSS 第18話 『Embassy』

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「着きましたよ」
警備兵が、黒檀製のドアの前で立ち止まった。ドアには『大使室』とだけ書かれていた。

   バァン!!!

 そのとき、大使室のドアが勢いよく開き、そのドアに当たった警
備兵は、壁まで跳ね飛ばされた……。頭を強打した警備兵は、その
まま気絶してしまった……。
「ドアの突っ立っているなんて、危ないわよ」
ドアを勢いよく開けた人物が、平然とした口調で言った……。

 その人物は体格の良い女性で、肩の襟章から准将だとわかった。
「あんたは、山口准佐ね?」
女性は山口の横を通り過ぎてから言った。彼女はこれからどこかに
出かけるようだ。
「ええ、そうです。あなたが大使ですか?」
山口は彼女を追いかけながら言った。
「ええ、そうよ。女性が大使というのは気に入らない?」
「いいえ」
「私は、アバーナシー准将よ。准将と呼ぶように」
アバーナシー准将という女性は、振り返ることなく言った。
「了解。今からどちらへ?」
「トイレだったとしてもついてくる気?」
「いいえ」
「これから、プラントのクライン議長さんと昼食会。あんた、私の護衛やってくれる? やるはずだった奴は、さっきの場所で寝たまんまだから」
アバーナシーが後ろを指さして言った……。
「別に構いませんが、護衛が必要なんですか?」
「どういう意味?」
「いえ、なんでもないです……」
「じゃあ、決まり!」
アバーナシーはそう言うと、駐車場へのドアを勢い良く開けた。幸い、跳ね飛ばされた人はいなかった……。



「あんたは、この車で後ろからついてきて」
アバーナシーはそう言うと、官僚向け公有車『カスミガセキ』に
乗りこんだ。カスミガセキは、黒塗りの高級セダンだった。エリート
向けの車という感じだった。
 そして、山口が乗ることになったのは、駐在武官専用車『エクストラ
テリトリアリティー』(日本語で「治外法権」という意味。)という、
長ったらしい名前の黒い車だった……。業務用バンを改造したような車
で、なんかヤバそうな外見をしていた……。
「やれやれ」
山口はそう言うと、その車に乗りこんだ。

 アバーナシーを乗せた車は、大使館の門を優雅にくぐり、その後ろを
山口の車が追いかける。二台がいっしょに走っている光景は、ひどく
シュールなものだった……。