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タマ与太郎
タマ与太郎
novelistID. 38084
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クラインガルテンに陽は落ちて

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第5章 パンク



クラインガルテンの初日に腰を痛めた僕は、ゴールデンウィークくらいまで農作業を控えようと思った。新しい会社に入ったとたんに、腰痛で会社を休むようなことになったら洒落にならない。
 H工業で僕は前職の経験を生かし、そこそこに存在感をアピールできた。4月いっぱいは新しい環境に慣れ、思いのほか居心地の良い時間を過ごすことができた。今年のゴールデンウィークは曜日の並びが良く、カレンダーは5連休を示している。この数年遠出もしなくなった僕は、約1ヵ月ぶりにクラインガルテンに行くことにした。腰もすっかり治っている。契約農家がアドバイスに来てくれる日を狙って僕は自転車を漕いだ。
 1年のうちで最も新緑が美しい季節だ。汗ばむくらいの陽射しに、葉を揺らす風が心地良い。僕は契約農家のアドバイスを受けながら、用意したインゲンの苗とニンジンの種をまいた。一段落着いたところで他の区画の人たちの作業を偵察することにした。皆思い思いに農作業を楽しんでいるようだ。小さな子供連れの家族、年配のご夫婦、かなり本格的に作物を手がけている人もいる。
 そんな中、初めてここに来たときに水道でかち合った麦藁帽子の女性を見つけた。
「こんにちは。先日はどうも」
「ああ、こんにちは。腰のお加減は如何ですか?」
 彼女は相変わらず僕の腰を心配してくれた。自分では寡黙な男だと思っていたが彼女とは不思議とテンポ良く会話が出来た。彼女はこのクラインガルテンに通って1年が過ぎたこと、去年はトマトやナスがたくさん収穫できたこと、今年はトマトのほかにジャガイモを植えたことなどを楽しそうに話してくれた。僕は名前を名乗ってから、自分の区画に戻った。彼女の名前が宮森由樹だということを知ったのが実は今日一番の収穫だったかもしれない。
 ゴールデンウィークが終わり、法事やら知人の結婚式やらで行けない日もあったものの、僕はほぼ毎週のようにクラインガルテンに通った。いつの間にかここへ来るとまず由樹のことを探している自分に気がついた。