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タマ与太郎
タマ与太郎
novelistID. 38084
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クラインガルテンに陽は落ちて

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「いらっしゃい、狭いところですけどどうぞ」
「お邪魔します」
 柚木は缶ビールをテーブルの上に置くと、早速窓からクラインガルテンを眺めた。
「なるほど、本当に良い景色だ」
 私は柚木を席に促すと、持って来てくれた缶ビールをグラスに注いだ。酒は強くはないが、真夏の夕方に飲む冷えたビールはやはり美味しかった。柚木は豪快にグラスを空けた。繊細で物腰も柔らかい印象が強かったが、意外な一面を見たような気がした。
「私、ポトフを作ったの。食べてみてくれますか?」
「それは楽しみだなあ、ぜひ」
 私は深めの皿にポトフをたっぷりと盛ると、柚木の前に置いた。
「うわあ、美味しそう、僕、スープものが大好きなんです」
「それは良かったです。でも真夏にこんな熱いお料理でごめんなさい」
「いえいえ、全然問題ありません。…あれ、ポトフにトマトですか」
「これがなかなか合うんですよ」
 柚木にとって、ポトフにトマトを入れることは相当珍しいことだったようだ。
「じゃあ、いただきます」
「ちょっと待って」
 私はポトフの中身を説明し始めた。
「ジャガイモとトマトは私が作ったもの。ニンジンとインゲンは柚木さんのです」
「そうですか、どおりで見覚えのあるニンジンだと思いました」
 柚木は、「美味しい」と何度も言いながら御代わりをしてくれた。食べっぷりの良い男性は好きだった。西側の窓の夕日は大分傾いてきた。
 夕日に染まったクラインガルテンを眺めながら柚木は呟いた。
「思えばあの農園のおかげで、僕たちは知り合いになったのですね」
「でも、もし水道でかち合わなかったらどうなっていたか」