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タマ与太郎
タマ与太郎
novelistID. 38084
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おしゃべりな男

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第1章 占い師



相変わらず進展のない会議に翔太は辟易していた。
単なるスケジュールの報告ならば社内データベースに書き込めば十分だ。
わざわざ会議の場で各自が報告する意味など何もない。
何かを決めることが目的の会議であれば、
議題を事前に配布し会議の場でそれぞれの意見を確認し合えば良い。
会議の場で、さあどうしましょうか、と考えることなど愚の骨頂だ。
常日頃からこの定例会議に対して不満を持つ翔太にとって、
この2時間は苦痛以外の何者でもない。

高崎翔太、30歳の独身。
中堅商社に勤める営業マン。
仕事は出来るが、少々おしゃべりなところが玉に瑕。

翔太は2ヶ月ほど前、会社の花形部門である営業1部から、
どちらかと言うと地味な商品を扱う営業2部に異動したばかりである。
部長から新しい部門で視野を広げてみないか、との打診を受け、異動命令を受けた。
しかし、翔太にとってこれは不本意な異動であった。
営業1部ではそれなりの営業成績を上げ、社内でもそこそこのステイタスを得た。
顧客先からも信頼され、仕事に対する充実感も持ち始めていたところだった。

「どうして俺が営業2部なんだ。俺ならもっと出来るはずだ」

会社命令とはいえ、納得できない気持ちはずっと燻り続けていた。
営業2部に移ってからは、顧客との支払い方法の交渉が増え、
社内でも経理部との調整を持つ時間が増えた。

森下有里はその経理部で顧客の入金確認などを担当する、翔太より2年先輩の独身だ。
決して華やかではないが、笑顔の似合う魅力的な女性だ。
一見おとなしそうに見えるが、いざというときはアグレッシブにもなる。
簿記の資格を取るなど、努力家的な一面も持つ。
性格も良いので、社内でも一定の人気を持つ存在だ。

退屈な会議を終え、翔太はちょっと気になる取引先の件で経理部に出向いた。

「森下さん、先月支払い遅延があった例の○×会社なんですが…」
「ああ、あの会社のことね。支払い能力はあるみたいだけど、
少しウオッチしておいた方がいいかもしれませんね」
「先方の担当者には僕からきちっとお願いしておきました。
最近うちの会社も与信管理が厳しくて、支払い遅延とかあると、
ブラックリストに載っちゃうんですよね、それで…」
「ごめん、これから外出なの。
私からも先方の経理担当者にもう一度確認しておきますね」
作品名:おしゃべりな男 作家名:タマ与太郎