小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
内裏 蓮(だいり れん)
内裏 蓮(だいり れん)
novelistID. 37648
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

0円ネットオークション(ほぼ同人販売)向け作品サンプル7

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
「取り返した海」



私はかくことを恐れる、

すべてをもってしても、死はつぐなえないからだ。

必然や義務とも思わない、

子を失い親を失い、妻を失った、 孫もない、

それでも、泣きながら歩き続けた、その心を多とする、それだからだ。

失い続けて見たものを、感じたものを、

私のからだを借りて言って欲しいからだ、

ひとはなになのか、それは生きたものにしかわからない、

しかし生そのものが理解できなくなった今は、

死んだものに、また言葉を借りざるをえない、

これは、私が書いたものとは思ってもらいたくない、

戦争は、すべての人の責任であり、たとえそれを知らずに生まれたとし

ても、人間の苦しみは、何らあますところなくまだ続いている、多少栄

養がよくなっただけで、100年前の人間と21世紀の人間が、変わる

ことはない、われわれは、いまだに各国の戦争が、自分たちの贅沢の結

果だとみとめようともしないし、その国の戦争を止めるには、占領とい

う2文字しか、知り得ない、誰もが思っているが、対北の協議はまった

くの無駄だ。アニメーションのように、宇宙時代が来ても、われわれは

殺しあうのだ、だが、その中から、一人が生き残れば、それは二人にな

り3人になる、その時に、人と書いて、悲しみと呼べるようになれば、

それは、一人の人間の言い切れる、最大の言葉だ−−−/





本場イタリアの歌劇場に、招待されるほどの、俊才−−−

そこで、一度きり椿姫をみたことがあった。

だが、たった30分で席を立った−−−

それは一流のアクターが出演し、招待に日本人は、敬遠されがちなのにも

関わらず、である、席を立った、30分、

なぜか、新婚早々、娘とともに病気、肺結核のままに本国へ残し、第一

次世界大戦に出征した、その妻が死に掛けていることを、椿姫のストーリ

ーは思い起こさせたからである、

しかし、これは、後の歴史家が残った姪(めい)の証言を元に推測したこ

とではあるが、駐在武官、つまり、軍人の外交官として、当時敵国イタリ

アの外交兼公安、そして留学ともいえる一次大戦での日本国の自らが0長

を勤める艦隊の進出先で、とどまることになった、

それがイタリア、しかし、ドイツにわたれば、インフレーションにより円

高が進みすぎ、あわよくば国際結婚ができ、その地にとどまることも思いの

まま、という甘い汁が目の前にあった、実際日本人の外交官が、それで身を

持ち崩している事件が跡を絶たなかったが、ドイツの歴史とファシズムに嫌

悪を感じ、さらに妻を何よりも大切に思っていたシゲヨシは、逆に円安のフ

ランスに転任願いを出す、そして、イタリア語とフランス語、まったく完璧

に学び終え、マスターした、それは、その2つの言葉で夢を見、ものを考え

るにもトリアングルでできる、といった徹底したものであった、

のちに井上成美(いのうえしげよし)は、反戦論者で通っている、もしこ

れが、三島由紀夫くらいなら、ドイツで豪遊し、第二次大戦でもって強制収

容所にでも入り、あっけなく処刑されたかもしれない(ドイツにおける日本

人の収容、殺害、これは事実でもある)そして、0年間の帰国嘆願を経て、

0年ようやく帰国、海軍大学校教官に任じられ、0年後には校長に就任、し

かし不便を承知で湘南鎌倉に妻キクヨ療養のため居を構えた、

海軍学校の仕事の傍ら、同盟が決まったドイツ語を部下のタイピストに学ぶ

など、忙しいなかにも何がしかの時間を持てるようになる、シゲヨシ0歳そ

の一生における唯一の幸福な時間が、戦いから逃れ(日中戦争勃発、および

アジア進出:これは本文)、たった一つの無事を祈ってすごす毎日が、つか

の間に訪れたそれは、最後まで彼を支えきった、ただ一つの確かな生きた記

憶である−−−



娘の名前、それは海外赴任先(かいがいふにんさき)でかれが1つき悩ん

でつけた名前である、最終的に静子としたのを旧字体に改めた、0(漢字が

出ません、説明も難しい)という字だ。まだ尋常小学の彼女とともに、鎌倉

駅までを毎あさごく早くともに通勤した、鎌倉駅から違う汽車に乗るさい、

いつも手を振って別れた−−−

初任であれば確実に総理大臣級の昇進を約束される軍務局第一課長の椅子を

蹴る、そして、最終的に無理矢理引き受けさせられた、そして、初出仕の日

に、引継ぎの最中に電報が届く、



一読した彼は、一瞬すごい顔をしたがすぐに平気の平左で職務を続行した−

−−

「キクヨ、ミマカル、スグカエレ」



のちに戦後、おしえごに本心を漏らしたことがある、あんなに悲しかったこ

とはない、と。

初出仕前夜、衰弱して寝ることもできぬキクヨの背をなでて夜を明かした、死

ぬのではないか、そう思う心に後ろ髪を引かれつつ、男の戦場へ向かえば、自分

の有能さが、そして激務を押し付けられたことにより、夫が自分を離れてしまう

ことが、すくなからず妻を傷つけたことも、疲れた頭でわかっていただけに

「「「自殺に等しかったのでないか」」」

そう当たり前に、おもわざるをえなかったのではないかと、沈黙がかたっている、

そして、それから0年後、軍令部総長が、陸軍により、大臣以上の権限を持つこ

とができるという「0法案」を、第一課長として、捺印拒絶する−−−



戦争を、とめようとしのだ−−−

それだけの信念が、彼にあったといえる、0ヶ月間、軍刀ピストルで脅されよう

と、断じて節(せつ)を曲げなかった、身長6尺、押し出しの強い、あまりに直

情径行なため「アホウドリ」と呼ばれていた0司令が、軍刀をぬいて殺すという

意味のことをいった、すると、

「覚悟はある、やってみろ」そう静かに言い放った、

たじろいだ「アホウドリ」に、引き出しをあけ、真っ白い封筒を取り出して見せ

た、

彼の達筆で 「「「「井上成美(しげよし)遺書」」」とかかれたそれは、居合わ

せたものをぎょっとさせた「俺を殺しても俺の意志は曲げられんぞ!」そう怒鳴

りかえした、その遺書が残っている−−−



1静子はお茶の水女高だけは出させるべし

2どこにも借金なし−−−たったそれのみ、書いてあった。

/



軍令部の密告を真に受けた伏見のみや殿下が、大角(おおすみ,と思いますが)

海軍大臣に詰め寄った、そして、ある日、大角のために捺印拒絶をしているシゲ

ヨシのオフィスに、頭を下げにきた

「おまえの気持ちはうれしい、だが、もう正しいことはとおらんのだ、はんこを

くれ」

「・・・わかりました、私を解任してください、次のものに押させましょう」

それだけのやりとりがなされ、そのとおりになった−−−



これより後だが井上成美は海軍兵学校長時代、敵性語の教育取りやめ命令を拒絶