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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その5】完

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【咲夜……アナタはワタシ、ワタシはアナタ……】
《ずっと…辛かったね…ごめん……ずっと気付かず私は……》
【ワタシはずっと一人だった……そしてあの海底の中で、ずっとアナタを見ていた…アナタの中から……】
《そうだね…私もそれがやっとわかったよ…ラシャが私をあの海底に呼んでくれたから…》

【百年近くもあの場所にいて、ワタシの分身体が人間界に降ろされたと聞いて、本当は怖かった。でも……アナタの中から見る景色はいつも笑顔の人たちばかりで……そしてアナタもいつも笑っていた。うらやましかった。ずっと……】
《…………》
【ワタシもアナタのように、楽しく笑いたかった。アナタになりたかった!】
《ごめんね……って…きっと謝ってもどうしようもないんだけど……だけどこれであなたは開放されるんだよ!私は私、ラシャはラシャとして、生きられるんだよ!》
【私は私として……?】

《そうだよ……だから…私が狼一族の封印を解いてあげる。それであなたは本当の自由だよ》
【本当の自由……?】
《もう、分身体に縛られることも、狼一族に縛られることもないよ!だから…》
【わかったわ…】
 そう言ったラシャは、白い翼になった両腕を広げたまま、動かなかった。

【ニズ!】
 その掛け声と共に、ニズは勢いよくラシャに向かっていく。

【何をしておるのじゃ!術じゃ!】
 しゃがれた声がそう言っても、ラシャは微動だにしない。
 私はそのまま一気に剣を振り下ろす。ラシャの右肩は、まるで紙切れのように、簡単に切れた。そこから白い翼が静かに海へと落ちてゆく。そしてラシャの肩から飛び散る大量の血。ラシャは苦しい表情をして目を固く瞑(つむ)る。私がラシャから目を背けた瞬間、背後にいたニズは自らの黒い翼を大きく振り、ラシャから飛び散る真っ赤な血を花びらへと変えてゆく。