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なにサマ?オレ様☆ 司佐さまッ!

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「そう?」
「俺だって、父さんが言っていることはわからないでもない。父さんだって乗り越えてきた道だ。まだ学生だし、時間はある……思えばコトハとは、鳩子さんの件から縁があるんだ。コトハを嫌いになる理由はないと思うが、しばらく足掻いてみるとするよ」
「うん」
 司佐は、静かに立ち上がった。
「ちょっと散歩してくる。三十分ほどで戻るから、一人にしてくれ」
「わかった……」
 そのまま司佐は、外へと出て行く。昭人はボディーガードとして少し離れたところを歩き、司佐を見つめた。
 巨万の富と引き換えに、己を縛られている司佐。昭人にはそれが不憫でならなかったが、自分が代われるものではない。せめて司佐の恋の成就を願い、明るい行く末を願った。

 司佐は別荘の門まで歩いて行くと、遥か道の先に目を凝らす。だが、人が来る気配などない。
「はあ……」
 深いため息をつき、司佐は鉄の門にもたれ掛かる。
 その時、ふと視界に少女の姿が映った。コトハである。
「コトハ!」
 司佐がそう言うと、コトハも驚いた顔をしている。
 どうやらコトハは門の近くで、長い時間、入るのをためらっているようだった。
「司佐様……!」
 コトハは硬直したように身をすくめると、急いで司佐に背を向ける。逃げ出したいと思ったが、足が思うように動かない。
 そうこうしている間に、司佐が門の外へ出て、コトハの前に回った。
「俺に背を向けるのか?」
「も、申し訳ございません……」
 恐縮しているコトハを、司佐は静かに抱きしめる。
「ごめん。たくさん傷つけて……」
 司佐の腕の中で、コトハは涙を流す。
「ど、どうしてこちらに……」
 やっとのことで、コトハが言った。
「おまえを連れ戻しに来たんだ」
 そう言った司佐に、コトハは絶望的な顔を見せる。
 この道中、どれだけ司佐のことを諦めようと努力したのか、司佐はわかっていないだろう。
「ひどい……ひどすぎます! やっと、司佐様から離れる決心がついたのに……やっと心に整理がついたと思ったのに、なぜそんなことを……」
「じゃあ、戻りたくはないのか?」
 どこか辛そうな顔をしている司佐に、コトハは首を振る。
「でも、また捨てられるのなら、もう夢なんかみたくありません……!」
 思い切って、コトハはそう言った。
「ごめん。すべては誤解だったんだ。全部話すから……俺の話を聞いてくれ」
 司佐は、コトハが自分と義理の兄妹だと勘違いしていたこと、その疑いが晴れたことを正直に話した。
 コトハはやっと司佐の心情を理解すると、そっと涙を拭う。
「よかった……嫌われたわけではなかったのですね?」
「嫌いになんかなるもんか。これからは、もっともっと大切にする。だから、おまえこそ俺を見捨てないでくれ。俺から離れないでくれ、コトハ」
 心が晴れたコトハに、司佐はそう言った。
「もちろんです! 司佐様が私を必要としてくれる限り、絶対に離れません」
「そうだ、コトハ。おまえの主人は俺だ。たとえ親父がなんと言おうと、おまえは俺の言うことだけ聞いていればいい。約束出来るな?」
 司佐がそう言ったのは、父親がコトハとの交際を反対しているからだ。今はまだ、コトハにそこまで説明することは出来なかったが、いずれ父親も行動に移してくるだろう。その前に、コトハにきちんと約束させておきたかった。
「はい。私のご主人様は、司佐様です」
「よし。じゃあ、本宅に帰ろう」
 そう言って、司佐はコトハの指に指輪をはめる。それは、コトハが置いていったものである。
 続けて司佐は、口を開いた。
「おまえは俺のものだ」
「はい」
 命令口調が愛おしく、コトハに愛を運ぶ。
 その後二人は昭人ともに、山田家本宅へと帰っていった。