小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

明月院編

INDEX|28ページ/47ページ|

次のページ前のページ
 


***


 会社に戻ると、私は再びピアノの前に座らされていた。
 でも今度はちゃんと明月院さんに疑問をぶつけている。

「私は小学生の頃のオルガンくらいしか弾いた事がないんです。なのに、どうしてグロスのイメージを弾いてみなくちゃいけないんですか?」
「―――あんたには、センスを感じた」
「え?」

 驚いた。
 きっと私の目、今真ん丸だと思う。

「俺は、自分のセンスだけで今まで曲を書いてきた。だから、別の人間の感覚を知りたい」

 それが、私。ってこと?

「別に上手に弾けと言っている訳じゃない。何か、漠然とでいいから適当にイメージを弾いてみろと言っている」
「―――適当に?」

 そんな事言われても……

「どんなメロディーが流れていたら、CMとしてあのグロスに合うと思う?」

 そう尋ねられて、私は考えた。
 まだモデルさんとかの写真を見ていないから良く分からないけど、自分だったらどんなCMがあのグロスに合うって思うだろう?
 可愛らしくて、それでいて元気がいい感じ――――
 ええい、ままよ!!

 ポロン……

 私は音楽の知識なんて何も無い。何も無いけど、明月院さんが私を必要としてくれている。だったら弾かなきゃ女じゃないわ!!
 私が弾いたメロディは、お世辞にも曲と呼べるシロモノじゃなかったけど、隣りで黙って聞いていた明月院さんは私を立たせ、代わりに座ってピアノに指を置いた。

「――――わ……」

 そして、私が弾いた適当な音を拾い集めて、すっごく素敵で可愛らしい曲を演奏しはじめた!
 すごい! どうして同じピアノなのに、明月院さんが弾くと意志があるみたいに表情豊かになるんだろう!!
 弾き終わると、明月院さんは立ち上がって急に私を抱き寄せた。

 !?

「助かった―――感謝する」
「えっ? えっ!?」

 すぐにその抱擁は解かれたけど、私は驚きでドキドキが止まらなかった。


 
作品名:明月院編 作家名:有馬音文