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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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さくらの花びら一枚心に落ちて来た

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ソメイヨシノの大木を見上げると、すでに満開を過ぎて緑の葉も見え始めている。
風が吹くたびに桜の花弁は散っていた。
見上げて見た桜も美しいと思ったが、風に舞うさくらの美しさはまた違った美しさを感じた。
わたしは手を花びらのなかに出した。
一枚の花弁が手に乗った。こうして手のなかの花びらを見ると、また違った桜の美しさを見た様な気がした。
初めて届いた手紙の中からさくらの花びらが出て来た。
その手紙のなかには依頼した品物が入っていたのだが、その花弁はピンクの紙を切り取って作ってくれたものであった。
わたしは本物の花弁よりも美しさを感じた。
その方の心遣いの美しさである。手紙のなかには形式的な言葉だけが書かれていたが、文字以上の言葉と感じた。
一人の人としての感じ方もあるが、人の部分部分を感じるとすれば、心配りの美しさである。
小さいころ父親によく言われたのは
「米を粗末にするな、米を造るには八十八の手間がかかるから、米の字が出来たのだ」
米粒も一粒を手にしてみると美しい。一粒をかみしめて見ると旨さが解る。
人の心も小さな粒のような行為が、その人を現わしているのではないかと思う。
わたしの心の中に桜の花びらがひらひらと落ちて来た。