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 戦いは終わった。
 三葉さんのおかげでワクチン・プログラムは完成し、洗脳された人達は元に戻った。
 もちろん1人や2人と言う訳ではないのでワクチンは大量生産して探索派のセイヴァ―・エージェント達に渡し、日本中を走り回っていると言う、
 それから3日後の保健室、
「えっと、ですからここの問題を解くにはですね……」
「バイス違うよ! まずはこっちの数式を解いてから」
「ムッ、ウウっ……」
 大神さんは眉間にしわを寄せながら必死でシャーペンを握りしめていた。
 もうすぐ補習が近いと言う事で私と不破さんが勉強を教えていた。
 するとマンガを読んでいた三葉さんが言って来た。
「だから、オレ様が絶対バレねぇカンニング・ペーパー作ってやるって」
「そう言う訳にいくか! 少し黙ってろ!」
「やれやれ、マジメだねぇ」
 と言うか三葉さんが不謹慎すぎるんじゃ?
 大神さんが一喝すると三葉さんは苦笑しながら両手をあげた。
 すると隣で携帯を弄っていた兄貴が言って来た。
「ケッ、筋肉バカが勉強したって無駄なあがきだろうが」
「兄さんだって赤点スレスレだったでしょうが、自分は大丈夫なんて思ってると、すぐ追い抜かれちゃうわよ」
「少なくともバイスにはありえねぇな」
「ぐっ」
 今回大神さんは反論できなかった。
 別に成績が全てって訳じゃないのに……
「そう言えばあのゼミどうなったの?」
 ふと不破さんが訪ねて来た。
「ゼミ自体は潰れちまったよ、何せ井浦って野郎の記憶を消しちまったからな」
 三葉さんがパソコンで戦っている間、大神さんがいなくなったロンを探し、兄貴がギルで井浦の記憶を消した。
 私達が撤収するまで気を失ってたから今はどこでどうしてる事か分からない、
 ちなみにロンは井浦が持っていた。
「あんな野郎どうでもいいよ、舞を襲うなんてざ、ふてぇ野郎だ」
 兄貴はまだあの事を根に持っていた。
 すると自分の机の上で仕事をしていた里中先生が会話に参加して来た。
「彼は勉強ばかりで人を思いやる気持ちが無かったのよ、教育システムと言うのも考えものね」
「ってか勉強なんか出来たって将来何の役にも立ちゃしねぇよ、現実偏差値が高けぇ学校出てんのに職ねぇニートなんて腐るほどいるしな」
 確かに不景気だし、運よく就職できたとしてもリストラされたり仕事の厳しさについて行けずに止めてしまう者も多い、
「勉強ってのは自分が将来やりたい事や叶えるべき夢があって初めて意味が生まれてくるんだよ、成績だけを求めてやってるなんざそれこそバカの1つ覚えだ」
 三葉さんの言いたい事は分かった。
 通訳の仕事に就きたいから外国の言葉を勉強する、作家になりたいから国語の勉強をする、絵に携わる仕事をしたいから美術を勉強する、
 それがあってこそ勉強と言う物は生きる物だと言う事が分かった。
「でも貴方達は学生なんだから、ちゃんと勉強はしておきなさいね」
「は、はい教官!」
 大神さんは苦悶しながら勉強を再開した。
 すると兄貴が私にすり寄って来た。
「舞〜、だったらオレにも教えてくれ〜」
「オレにもって、大神さんをバカにしてたくせに」
「いや、オレぁどうしてもお前に教えて欲しい教科があってさ」
「何よ?」
「保健体育!」
「なっ?」
「ノートも教科書も要らずに手取り足取り……」
「このバカ兄貴―――っ!」
 私の怒りの鉄拳が兄貴の顔面にめり込むと偶然開いていた窓の外まで吹き飛ばされた。
 表で練習していた運動部員達は何事かとこちらを見ていた。
「なん…… で?」
「知るかっ! 自分で考えろっ、バカッ!」
 蝉のコーラスが響く真夏の空の下に転がる兄貴に激を飛ばすと勢いよく窓を閉めた。