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宇宙列車 私の夏休み

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もうじき静止衛星都市。徐々に列車は減速する



 もうじき静止衛星都市に到着する。安全に列車を止めるために徐々に速度を落とす。
「ちょっと、気持ち悪く感じるわ」
「上に重力をかすかに感じる。進行方向に」
 私たちは宇宙放射線から守る鉛でできた防御服を着ている。未婚の女性の身体を守るため。帰りは地上に向かって自由落下。その速度は徐々に早くなる。周囲にあるタイヤの摩擦で徐々に速度を落とす。電気を発電するブレーキで速度を落としながら、他の上昇する列車に電力を送る。
 通勤電車の発電ブレーキと同じである。
「ねえ、頭の上にボールが、ゆっくり上昇するわ」
「なんだか逆立ちしたみたい」
 その時、担任の南先生の声が聞こえた。
「みなさん、いまは列車を減速させているところです。もうじき静止軌道都市へといたります。上部にわずかに重力がありますので注意してください」
「はい」
 わたしたちは一斉に返事した。

「南先生、宇宙放射線は女性の身体に良くないと聞きましたけど、どうしてですか。将来、結婚して子供を産んだときに奇形児が生まれないためと聞きました」
「宇宙放射線にもいろんな種類があり、アルファ線は紙ひとつで遮れますが、最も波長が高いガンマー線は鉛でないと遮ることができません。また、放射線は人間の細胞を破壊する作用があります。癌を治すために、放射線を当てるのと同じです。でも、万が一、細胞が破壊されても大丈夫のように、血管内にナノマシンを注入する方法があります」
「でも、この放射線防御服は着心地が悪いです。何とかならないですか」
「宇宙列車そのものを地球をおおう磁場のようにすればいいかもしれません。バンアレン帯は知っていますね。あれがあるから地球上に生命がいるのです。有害な放射線から守ってくれるからです」
「宇宙列車にもできないのですか」
「効率良い磁力を発生させて上昇させています。近年、列車にも磁気シールドで放射線を守る方法を研究しています」
「そうですか」
「でも、着はじめたとき、ずっしりして重いです。でも、宇宙服よりは経済的だと聞いいて」
 南先生は答えた。
「21世紀は有人宇宙飛行の冬の時代でした。しばらく人類は宇宙開発をロボットに任せきりでした。で、22世紀になり人類の人口が急激に減少し、政治思想や宗教で争っている場合じゃないのに、200年もの間、対立していました。現代でも争いが続いています。たぶん、宗教的な争いが終わるのは早くても50億年後の未来です。宇宙の危険性よりも宗教の危険性の方が恐ろしいです」
「では、私たちが宇宙に行くのは」
 私は質問した。
「そうですね。地球を真っ二つにしたら地球には生命がいなくなるでしょう。それは火星へ人類を移住させ宗教のない世界で、人類の歴史をやり直すのです。えーと古典の『火星年代記』のような状態になるでしょう」

 私は『火星年代記』という本を知らない。

 いずれ人類は宗教という自縛から逃れるために、火星へ移住する。万が一、核戦争が起きたとき、核の冬の地球よりも火星のほうが住みやすいからだ。

 火星をテラホーミングする。地球に取り残された人たちどうしが、宗教と文化の衝突で核戦争を行う。火星に残った人たちが新しい人類として戦争も犯罪も貧困もない社会を作る。たぶん数百万年後の未来のことだろう。

 これを「ミレミアム(後1000年王国)計画」と呼ぶ。
 地球が滅んだあと、火星が第二の地球になる。

作品名:宇宙列車 私の夏休み 作家名:ぽめ