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あみのドミノ

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「さっきの電話のことじゃない」
私がそう言うと、幸子は少し甘えるような感じで「今度の土曜日に友達と会うので夕飯どこかで食べてきてくれる」と言った。私はカレンダーに眼をやって、その土曜日が亜美乃の就職面接の日だと解った。【好都合】とすぐに頭に浮かんだ。
「ああ、いいよ。遅くなるの?」
「そんなに遅くはならないけど、帰りは車で送ってもらうから心配ないよ」

幸子は食事の後かたづけをしながらそう言った。亜美乃と一緒に食事ができるかもしれないと思い、わくわくした気分になった私は、テーブルの上の食器を流しに運び妻の脇に並んだ。
「洗ってやるから、拭いて片付けなよ」
 私がそう言うと幸子はちたっと私を見上げ「なーに、新婚ごっこ?」と言いながらも、嬉しそうな顔をした。若い頃とそんなに変わっていないような気もするし、ずいぶん歳をとってしまったなという感じもする。
「あっ」と何かを思い出したように幸子がテレビの前に行く。
「次はこのグループの演奏です」という司会者の声に男性三人のグループが出てきた。幸子の眼はテレビに釘付けになっている。

私は洗いものを済ませ、別のテレビが置いてある寝室に入った。野球中継を見ながら、頭の中には亜美乃のことが思い出された。

作品名:あみのドミノ 作家名:伊達梁川