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あみのドミノ

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3、お祝い



「おとうさん!」
妻幸子の声に私は我にかえった。
「そんなにアミが好きなの。じーっと画面を見つめたまま私が話しかけても聞こえてないんだから」

テレビではアミという歌手が歌っている。最初は、亜美乃に眼が似ているなあと思いながら見ていたのだが、いつの間にか亜美乃の笑顔や真剣な眼差しで私を見ていた顔が浮かんできて回想していたのだった。
「ん、悪い悪い、あんまり可愛いいもんだから」
「どうせ、私はもうおばさんで可愛くないですよ」
「そうだね」
「ん、もう! もういいっ!」
「ところで、何? 何か用だったんじゃない」
「もう、忘れた」

幸子がすねた顔をして横を向く。私はふと出会った頃の妻を思い出した。亜美乃とどこか似ているかも知れない。
「可愛いよ横顔が」
幸子の表情が弛むのが見える。
「可愛くないよーだ」
幸子がこちらを向いてアカンベーをした。まるで新婚のような気もしてくる。確かに歳をとったが、中身はそんなに変わるもんじゃない。小さい頃に五十のおじさんおばさんといえばもう年寄りに思えた気がする。いざ、自分がなってみると、若い頃と何も変わってないと思う。体力の衰えは解りやすいので実感できるが……。

作品名:あみのドミノ 作家名:伊達梁川