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そして海には辿り着かなかった

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そこから見える景色で泣く


あれは確か、、、そう、イチヲが恋をして友達に相談したら『頑張れよ、いけるって!』と励まされ元気100倍!とか
思いきやその相談した友達と惚れた女の子とのカップル誕生!という悪夢のような現実を横っ面にフルスイングでイレられてる時。

泊まったオンナの家にウサギがいて夜中じゅう、ケージをゴリゴリゴリゴリその歯で擦るから
全然眠れなくてそのまま寝不足の目をウサギ以上に擦っていたシロウが缶コーヒーでどうにか眠気を飛ばそうとしている時。

近くに大きな橋がある河原でその橋の上を行き交う自動車や歩行者を眺め回しては、ナリタがひたすらロケット花火をその橋めがけて撃ち込んでいる時。

夜の11畤過ぎ。風は温く、月は明るい。星は見えない。薄い雲が少し流れる時。

一体何発撃ち込んだのか。そして何発目だっただろう。
その一発が歩行者の前をかすめる。
その歩行者はゆっくりと足を止めナリタ達の方向へと顔の向きを変えた。
さすがにマズイという空気が周りを支配する。まあもっともイチヲは涙目のままだけど。
その歩行者はまたさらにゆっくりと橋の横にある河原へと降りる細い会談へと歩みを進め踏みしめるように降りて来る。

「おいおい、こっち来んじゃねえか」
シロウがあくび混じりに言う。
逃げるか、逆切れという理不尽極まりない方向性に打って出るか、それとも素直に謝るか。
結論を出そうとナリタが一歩前に出た時、イチヲはすっとんきょうな声を上げる。

「スパンクゥ!?」
スパンク?ひょっとしてあの歩行者はスパンクだったのか?確かにその通りだ。シロウが缶コーヒーを飲み干し立ち上がる。
しかしスパンクは今頃クラブイベントに行ってるはずじゃ?そしてまったく連連絡とれずに自分達を置いてけぼりにしたスパンクに怒りが込み上げるが、
次の瞬間言葉を失う。
そして1オクターブ高いイチヲの声。

「スパンク!どうしたんだよ!そのキズぅ」
見ると確かに顔中、いや、体中傷だらけだ。さっきまで鼻血が出ていた形跡もある。

「ああーお前のことだからまたゴミ箱漁って野良犬とでもケンカしたんだろぅ?」
そうだ、なぜか。な・ぜ・か・そこにいるノリスがそうスパンクにむかって吐き捨てるように笑った。
そうゆうくだらない冗談は時と場合を考えて欲しいもんだ。とナリタは内心思いつつスパンクが笑ったのを見逃さなかった。

「いや、どうやら野良犬は俺らしいよ」
と呟くスパンク。

どうゆう意味なのか。その場にいた全員がわからなかった。
でもこのスパンクの身に尋常じゃないナニかがあったことだけは誰の目にも明らかだ。

「あっお前ユキと河原でヤろうとして河原なんて蚊とか変な虫いるから嫌って殴られたんじゃねえの?」
またくだらないことをノリス。

「いや、これ殴られすぎだろ」
イチヲが観点のズレたツッコミを入れる。
そんなやり取りの中、スパンクは置いてあったロケット花火を手に取りライターで火をつけた。
そのまま真上に飛んでいき音もなく消えてしまった。

「今日は月がキレイだなー」
スパンクが夜空を見上げたまま誰にともなく言う。
確かにキレイだ。
「あのまま月まで届けばいいのになー」

どこまでも飛んでいければいいのに。飛べればいいのに。
あの月を掴めればいいのに。鳥のように自由に飛び回れたらいいのに。

「でもな。鳥は自由になんて飛んでないよ。飛ぶしかないから飛んでんだ。きっとな」
スパンクが口元の傷を痛そうにしながら笑った。