紅いスポーツカー
笹島のセダンが時速百キロで走行していると、間もなく紅い車は推定時速百五十キロで再び追い越して行った。
その後笹島の車は前方を警戒しながら走行車線を走っていたが、前方にのろのろ運転の紅いスポーツカーをまたも見ることになった。彼は追い越し車線に移動して追い越そうとしたが、のろのろ運転の紅い車も追い越し車線に移った。笹島は思い切りブレーキペダルを踏み込み、危機感を覚えながら走行車線に戻って追い越そうとする。紅い車も走行車線に戻る。笹島は怒りながらまた追い越し車線に入って追い越した。明らかに異常だと思った。これは一種の「虐め」である。笹島はそう思いながら、そのあとは時速百キロで走って行く。怒りと恐怖が、彼の心に交互に去来した。
けたたましくクラクションをかき鳴らしながら、間もなく彼を追い越したのは、やはりあの紅いスポーツカーだった。推定時速二百キロ。あっという間にゆるやかなカーブに消えて行った。笹島は高速道路から出ようと思った。
笹島は出口の手前のサービスエリアに車を入れた。その直後、彼の車の前方のスペースに、騒音と共にあの紅いスポーツカーが入って来て停止した。笹島は更に憤りを覚えると同時に恐怖を覚えた。