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35.ふけさん




「さてさて、お宝はどこかな〜」

 無事に地上に降り立った私は、アイドルプロダクション『わっしょい』のビル内に潜入した。詳細はわからないが、なにやら事件があったらしく、そのゴタゴタに紛れることができた。


「ここが怪しいな」

 私は「倉庫」と書かれた部屋を見つけ、特に深く考えずにその部屋に入った。倉庫の中は薄暗く、少しかび臭いにおいがした。およそ10畳くらいの部屋には銀色の棚が並んでいて、そこには衣類や小物が雑然と置かれていた。

「あのダンボールが怪しいな」

 私は倉庫の奥のほうにあるダンボールに目をつけた。そのダンボールからは黒いカセットテープがあふれ出ていた。私はそのダンボールを取り出そうと、奥の暗がりへと向かった。

「あの……どちら様ですか?」

 倉庫の隅。闇の中。ゆれる黒髪。鈍い光を放つ眼鏡。その眼鏡の奥にある、淀んだ瞳と目が合った。私は思わず「わぁ」と叫んだ。すると、黒髪眼鏡の女性も「わぁ」と叫んだ。

「す、すいません。驚かしてしまいましたね。私、高橋未実(たかはしみみ)と申します。倉庫の管理人です」

 黒髪眼鏡の女性はすくっ、と立ち上がり、そう言ってお辞儀をした。そのとき、私は不覚にもドキッとしてしまった。立ち上がった彼女の細長く色白な手足に。そのシュッとした美しい輪郭に。そして、そのへたくそな笑顔に。

 こんなにも笑顔のへたくそな人がいるのかと思うほど、彼女の顔は引きつっていた。このへたくそな笑顔、どこかで見たことあるような……。私は顔面痙攣でもしているのかと思うほどピクピクした表情筋を見ながら記憶をたどった。

「……あなたもしかして、占いアイドル『クリスタル』の『ミミ』さんですか?」

 黒髪眼鏡の女性は小さく「はい」と呟き、ゆっくりとうなずいた。